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最終的には電視観望的なセットになった令和のTNK
無謀な?チャレンジ令和TNK Part2

令和TNKその1 窓際天文台MENU

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 この窓際天文台、少なくとも2020年ぐらいまでの基本的な撮影方法は「TNK=て・ぬ・き」だった。デジカメの超高感度を活用して安価な赤道儀で短時間ノータッチで撮影…だった。デジカメの進化はすごいものがあるが、スマホが台頭してくるとデジカメは高級化してTNKには使いにくくなってしまった。代わりに出てきたのが電視観望セットだ。これを活用した方が今のTNKにはふさわしいのではないかと…

まだあきらめていない令和新時代TNK


ガイド鏡で構成した令和TNKキット
実はCMOSを使った方が令和のTNKとしてはいいんじゃね?ということでとりあえず手持ちのパーツで組み上げてみた

令和のTNK。まだあきらめてはいけない。いや、まぁ、前回までやっていたスタークエストP130Nは、もうあきらめた(^^;。ただ、その際に、冷静になって少し考えてみた。TNK(て・ぬ・き)を進める上で、どんなものにするか、簡単にまとめると

・なるべく安価に、一般的な購入で揃える
・ノータッチ短時間高感度撮影で、メジャーな天体をそこそこ楽しめる(撮影できる)
・フルサイズ換算1000mm前後の焦点距離で、迫力のある天体を撮る
・単品だけでなく、将来的なグレードアップも図れる

…といったところだろうか。一番最初と違っているような気もするが、そこはてきとーだ。(ヲイ

スタークエストP130Nは、口径13cmF5.0で、4万円ほど(+モータードライブ)という超安価なシステムがパックで売られていたので、これを使えればラッキー、というつもりだったのだが、そうは問屋が卸さない、ということだった。ここで、本来の主張に戻って安価なEQ5赤道儀+13cmぐらいの安価な反射望遠鏡で、もういちど組み直してもいいのだが…ふと


「最近流行りの電視観望システムでもいいんじゃない?」

と思うようになった。大きなポイントは、カメラとPCだ。これまでは、安価な一眼(レフ)カメラを使って、高感度短時間で撮影しようとしていたのだが、そうすると、一般的にはAPS-Cサイズのセンサーになる(まぁ、マイクロフォーサーズでも行けるかもだが)。価格は、中古で4〜5万円を想定していた。

しかし、ここに電視観望用のCMOSカメラを考慮に入れると、一気に導入機器のバリエーションが広がったりする。例えば、売値2万円ちょいのPlayer One Ceres-C(ケレス)だと、1/3型で、長辺4.9mm、フルサイズ(長辺36mm)のざっくり7倍となる。ということは、1000mm相当の焦点距離は、1/7である150mm程度で得られることになり、150〜200mmぐらいの手ごろなレンズがあれば、迫力ある写真を撮ることができる(はず)ということになる。これなら、軽量にできるので、赤道儀もポタ赤や、AZ-GTiで良くなったりして、色んなパターンが考えられる。シュミットさんや星ナビで特集されてる電視観望セットなどは、まさにそんな構想の下に選ばれている感じだ。

ただこの場合、撮影機材にPCが必要になるので、これまでのTNKの考え方から言えば電源管理やPC操作、PCの価格面等からTNKとは相容れない内容であった。が、時代は令和。WindowsPCの安価なものや、中古のものであれば比較的容易に手に入るようになっているし、電源系も安価なポータブル電源や、場合によってはPDのモバイルバッテリーでなんとかなるようになってきた。もはやPCを排除する理由はほとんど無くて、Ceres-CとPCの値段を合わせても、安価なデジタル一眼(レフ)カメラと変わらないレベルになってきているのだ。(夜露の降りる屋外でPCを使うというリスクは残るが…)

よし、それならば、時代の変わった令和らしく、CMOSカメラでTNKをやれればそれでいいんじゃね?となったわけだ。

では、さっそく必要な機器を揃えて…
と、その前に、本当にこれでそこそこのTNKができるのか、まずは手持ちの機器類を使って、できるところまで試してみた。前回のスタークエストは、とにかくそのセットを買ってみないと分からないところだったが、今回は手持ちで色々あるので、その辺で試した上で、うまく行きそうならキーコンポーネントのカメラも導入してみて…と進めて行こうかと考えている。現状で試せそうな機器を並べてみると…

カメラ:ZWO ASI183MC 1インチセンサーだけど、クロップして使えばほぼ同じかな?
鏡筒 :これが悩ましい。とりあえず安価なガイド鏡(5cmF4)を使ってみる
赤道儀:現行品でもあるスカイメモSセットを使うのが良さそう

こうしたセットで、カメラを将来的にCeres-Cにしてみる、というわけだ。Ceres-Cで組んだとして、カメラ色々で2万円、ガイド鏡が1万円ぐらい。赤道儀セットが三脚含めて7万円ちょい、と言ったところだろうか。これにノートPCを2万円とすると、合計12万円…うーむむ、10万円を超えてくるが、13cm反射(3万円)と赤道儀(5万円)と一眼カメラ(4万円)と…と揃えると、もうちょっとかかりそうなので、TNKで同様の絵を得るのなら、そんなに変わらないかな、と適当に考える。後々のグレードアップは、EQ5とかの赤道儀を買った方が色々できそうなのだが、ポタ赤ならコンパクトに色々使えるので、その辺はどっちもどっち、かと思う。ただ、ポタ赤の場合は自動導入(化)ができないので、その辺をどう考えるかによって変わってはくる。短時間露出でいいなら、操作系との問題は残るけどAZ-GTiとかトラバースとかの自動導入経緯台を導入した方がいいかもしれない。

さて、後は実際に撮影してみて、このガイド鏡がどこまで使えるか…というところだ。いや実は既に星野撮影も試してみているのだが、やはり色収差的に「ちょっとこれはアカン…」という状態だったりする。思ったようにはいかないもんだ。しいかたがないので、秘密兵器を…つづく…。


さすがにアクロマートのガイド鏡では…


ガイド鏡TNKシステムで撮影してみたM57だが…
ガイド鏡TNKシステムで撮影してみたこと座のM57リング状星雲。しかし、F4.0アクロマートという無理なスペックだからか、収差がひどく、なんかもやもやっとしてうまく見えない…。
SIGMAのF2.8望遠ズームで撮影してみたM57
ガイド鏡でうまく行かなかったためなんか悔しくて半分反則技のSIGMA70-200mmF2.8ズームを引っ張り出して撮影してみたM57。これならTNK撮影と言ってもいいんじゃね?

時は2022年の初夏。新・令和TNKのシステムとしてアクロマートで口径5cm、焦点距離200mmのガイド鏡にCMOSを取り付け、ポタ赤を北側のベランダに展開して、夏の対象を狙ってみた。前項目の写真がその状態だ。ガイド鏡だとファインダーも無いのと、当日は2等星も厳しいかも、というような霞んだ空だったため、とありあえずベガからたどれるM57を狙ってみる。多少迷いはするが、ASI183MCだと、1インチセンサーなので広く使えば(ズルイ)探すのはそんなに難しくはない。。

で、ピントを合わせ直して撮影に入るのだが、なんか変だ。まぁ、5cmという口径の小さい望遠鏡なので解像度が低めなのは仕方が無いとしても、M57の輪っかの穴が見えない。なんだかなぁ、と思いつつ撮影した。比較的明るい対象なので露出は30秒。ゲイン217だ。12枚スタックした結果が左側の写真だ。周辺に見えている星々もふわっとして焦点が定まらないような感じだが、実はこれでピントは合わせてあるはずだ。トリミングしているので分からないが、フラットナー等を入れていないため、周辺画像は結構流れている

むむぅ。周辺画像はガマンするとしても、色収差はどうしようもない。もっとも、そもそもガイド鏡は口径50mmF4と、アクロマート屈折としては結構無理があるスペックなので、撮影に向いているかと言えば絶対違う(^^;。そんなのを無理に使うなと言われればそれまでなのだが、比較的安価なシステムを目指しているのでうまく行けばラッキーだと思うぐらいで試してみたのだ。結果としては玉砕しているが…。

電視観望で特定の波長を通してのモノクロとかなら多少マシかもしれんし、QBPフィルターとかを通せばもしかしたらもっと行けるのかもしれんが、あんまし凝ったことはしたくないので、とりあえずここでは「この鏡筒ではTNKに向いていない」という結論にした。改善代はあるかもしれんが、これを追いかけていても簡単ではないという結論だ。

SIGMAのF2.8望遠ズームでシステムを組む!
SIGMA70-200mmF2.8ズームで撮影システムを組んでみた。なかなかカッコいいと思うのは自分の機材だからだろうか…

ただ、このままあきらめてしまったのではちょっと悔しいので、秘密兵器を引っ張り出した。SIGMA70-200mmF2.8EX HMSだ。購入は2003年なので、もう20年ほど前のレンズで、インナーズームなのに上を向けると望遠側に勝手にずれるというガタが来ているのだが、描写は悪くないはずだ。これをTNKとして使うのは現時点ではズルいので、もうちょっと別の手を考えるつもりだが、とりあえずガイド鏡でもやっとした気持ちを晴らしたいので、試してみた。すると…(上の写真右側)

なんということでしょう。ガイド鏡ではもやっとして穴が十分見えなかったM57が、撮影時点でくっきりとドーナツに見えるのだ。写真は星がちょっと星型になってる気がするが、多分、これ、電線にかかっていると思われる(^^;。レンズは70-200mmのズームなので、70mm側で対象を探して、ぐぐっとズームアップすれば便利に拡大できる。(実はピントも盛大にずれるので、ピント合わせ直しは必須)。うーむむ、これ、便利だぞ。

この他にも球状星団M13何かもさつえいしてみたが、とりあえず球状星団のツブツブは分かる感じで、TNKとして撮影機材としてはこれでいいんじゃね?と考えた。問題は、このクラスの望遠レンズは今や20万円前後があたりまえで、中古で導入したとしても6−8万円してしまう、というところだろうか。当時は購入価格で9万円ぐらいだったんだけどなぁ(遠い目)。ヤフオクとかで古いものを落とせるならチャレンジしてみる価値はあるかもしれない(リスクは残るが…)

さて、となると、TNKで望遠レンズが使えて、かつ安価に導入するとなれば、アレだろうか、アレ。一応、次の手は考えていたので、次のチャレンジに進めていく。…つづく…。


安価なキットレンズで試す


KissX5に付いてきた55-250mmF4-5.6 ISで撮れるか?
F2.8でなくてもキットレンズで撮影できるんじゃないかと期待してセットしてみる

さて、すっかり迷走?してきた「令和TNK」だが、少しずつ形になりそうになってきた。とは言っても結局、電視観望に限りなく近づいているだけな気はする(^^;。

TNK撮影に望遠レンズが使えそうだ、というところで、今回はもっと安価で手に入りやすい?、ダブルズームキットの望遠ズームレンズを使うことにした。使ったのはCanon EF-S 55-250mmF4-5.6 ISだ。

このレンズは KissX5を買ったときにレンズキットとして付いてきたものとなる。ボディはとっくに売り払ってしまったのだが、レンズは色々使い勝手がいい(と思っていた)ので手元に残っていたものだ。ほぼ使っていないのだが(^^;

今は一眼レフカメラもだんだん減っているので、新品のダブルズームキットを買うのはお勧めしにくいのだが、レンズ自体の中古であれば1万円前後で手に入るようだ。ダブルズームとして欲しいなら、カメラ付きで中古を買うという手もある。が、そこまでズームするなら、いっそのこと18-200mmぐらいの高倍率ズームを中古で買うのもアリかもしれない。画質の懸念は残るのだが、Canon純正のEF-S18-200mmF3.5-5.6でも、3万円弱であるみたいだ。ちょっと気になる…

ただ、このレンズに限らず、キットレンズクラスのレンズは、原則三脚座が付かない。CMOSカメラの三脚ネジ側から支えてもいいのだが、かなり無理があるし、カメラによってはその三脚ネジ穴も無いので、何らかの三脚座が欲しくなる。ネットをさまよってみると、サードパーティーの三脚座もいくつかあるのだが、レンズ径や取り付け場所の関係でちゃんと使えるかどうかは、買って見なけりゃ分からんかも…というか、径から見てほとんどの場合うまく行かなさそうだ。

今回は、とりあえず先日の70-200mmF2.8EXについている三脚座を使ってみた。内径が68mmほどで、そのままだとちょっとスカスカなので、ISやAFの切り替えスイッチがある部分にペットボトルを帯状に切り取ったものをひと巻きして、なんとなく固定してみた。レンズやカメラが軽いので、こんないーかげんな固定でもそこそこ行けそうだ。ただ、三脚座を緩めてカメラを回転させるのは無理がある。今回はカメラアダプターを介して接続しているので無理だが、最終的にCeres-Cとかを使う時はアイピースアダプターを使うようになるので、カメラ側で回転させれば何とかなるだろうと思う。

キットレンズで撮影したM57
キットレンズで撮影したM57。トリミングはしているが、これだけ写るのなら格安レンズとしては上等じゃないかと感じている。

赤道儀は前回同様スカイメモSセット。極軸合わせは正直適当。極軸望遠鏡から覗いて、時角計算されたそれっぽい所に簡単に入れただけとしてある。ただ、問題はそこではなくて、部屋から出たばかりだったり、PCをいじって目が暗闇に慣れていないときに、油断すると三脚を蹴ってしまったことだ。2回ぐらいやらかしている(^^;。2回目は「もういいや、そんなに狂ってないだろう」と思って続行したら、実は盛大にずれていたというオチ付き…

さて、肝心なのは写真の写りだ。2010年以降ぐらいの、デジタル化対応になったキットレンズであれば、低分散レンズを使っていなくても?(いや、もしかしたらどこかに使っている?)結構写りも良くて、色収差も抑えられてたりするらしい。まずは55mmでこと座を狙うが、1インチのZWO ASI183MCの画角をフルに使えば、こと座が余裕で入る。なかなかいいぞ。電線越しなのは、もうしょうがないとしよう(^^;

ここからズームアップしてM57を狙うが、ズームに伴ってピントは盛大にずれる。この辺、カメラを使っている時はあんまし気にならないので、もしかしたらカメラ側で自動的にピント調整とかされてるんだろうか…?ま、どっちでもいいんだが(^^;

250mmまでズームアップして、フルHDまでクロップすると、M57もなかなか大きく写る。問題は、ここからピント合わせするのがなかなか困難だという事だ。もしかしたらバーチノフマスクとか使えばもっとしっかり合わせられるのかもしれないが、それは今後の課題としよう。問題はピントリングの操作性で、「遊び」の部分でピント合わせをしなければならないぐらい微妙だ。この辺はちょっとネックになるかもしれん。

星の写りを見ると、もう一歩な感じはしているが、この辺電線の影響やピントの調整によって、もう少しマシになるんじゃないかとは思っている。M57の写りそのものは、先日の70-200mmF2.8より、もしかしたらいいかも?というレベルだ。露出含めて諸条件を合わせていないのでなんとも言えないが、250mmまでズームアップしてあるのも効果はありそうだ。ズームレンズなので、もう少し引いて撮影してもいいかもしれん。とにかく、これなら色々遊べそうな予感はする。

天体の導入方法等も含めて、まだまだ課題は多そうだが、ここまで写るのなら、令和のTNKとしてはこれで行けそうだ。後は、今の1インチセンサーのZWO183MCではなくて、安価なCeres-Cとかで実際に試してみなければというところだが…まぁ、そこはもうTNKを楽しんでみたい、という人に任せることにしよう(他人任せ)。

さて、ここまでの所で、まだ以下の疑問点が残っている。ブログではこの後まだ少し撮影を進めてみて確認できているところもあるのだが、少しまとめてみよう。

1.センサーの小さいCMOSカメラでも使えるのか?
2.ファインダー代わりの指標が付けられるか?
3.ピント合わせをもう少し正確にできるか?(バーチノフマスク?)
4.赤い星雲をしっかり撮れるか?
5.ウェイトをもう少し軽くできるか?
6.市販の安価な三脚座を使えるか?
7.全部揃えると価格はどうなる?
8.発展性はあるのか?

このうち、確認できているのは

4.赤い星雲はASI183MC+ズームレンズでも十分撮影できる
5.ウェイトレスにすると、多少バランスは不安定になるが、撮影に支障は無く十分行ける
6.試せてはいないが、>ガイドスコープ/ファインダー用のブラケット+アイピースアダプタ等が使えそうな気がする(リンク先はamazon)。実際うまく使っている人もいるようだ
8.赤道儀側をどうチョイスするか、というのはあるが、レンズやCMOSをグレードアップすることで発展性は十分にある

…というところだろうか。

自動導入の架台を含めて、とにかく簡単に天体写真を楽しむ、というシステムは2023年現在、電視観望を中心にどんどん発展している途中と言える。今後が楽しみなジャンルになってきていると言えよう。5年後には、またもっと楽しそうなTNKのシステムが広まっているかもしれない…。


なお、本HPで紹介している「令和TNK」は、これまでブログ「玄の館 ブログの部屋」「令和TNK」で紹介してきたもののまとめたものです。気になる方は是非ブログもご覧ください。
令和TNKその1 窓際天文台MENU

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