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令和TNKを目指すべく導入したStarQuestP130N
無謀な?チャレンジ令和TNK Part1

令和時代のTNKその2 窓際天文台INDEX

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 この窓際天文台、少なくとも2020年ぐらいまでの基本的な撮影方法は「TNK=て・ぬ・き」だ。一眼デジカメの超高感度を活用して安価な赤道儀と望遠鏡で短時間ノータッチで撮影するというもの…だった。デジカメの感度進化はすごいものがあるので、比較的?簡単に撮影できる、少なくとも普通の人が見て「おおっ!」と思える写真ぐらいまでは撮影できるようになってきた。しかし、この趣味は時間とともに重厚長大なシステムを導入してしまう傾向にあり、気が付くと機材的にとても「TNK」とは言えないレベルになってきていた…。

令和新時代のTNKにチャレンジ


初期のR200SSでTNK
2011年頃に活躍していたVixenSP赤道儀とR200SS、いずれも知人に安価に譲ってもらったもの。カメラは既に導入していたEOS60Dを使ったので、初期費用はかなり安く抑えられていた

さて、2020年頃までは、機材をどんどん導入しながらも、基本はノータッチ撮影を続けていたのだが、あんまし重厚長大なシステムをあれこれ使っていると、「この趣味は面白いよー、始めて見ない?」とお勧めするにしても、無理が出てくるようになってきた。まぁ、本格的な機材を導入すると、赤道儀に100万円、筒に50万円かかりますよ、と言われれば、じゃあやります、という人もほとんどいなんじゃないかな(^^;。

考えてみたら、デジカメで天体写真をやり始めた頃、2011年の頃は、安く譲ってもらった安価なシステムで進めていた。機材は中古や譲ってもらったもので、最新のカメラの高感度をうまく使って、できるだけ手軽に、でも見た目は本格っぽい天体写真を撮影しよう、という試みだった。写真の機材は、そのころに使っていたものだが、赤道儀はVixenのスーパーポラリス、鏡筒はかなり初期のR200SSだった。今考えてみたら、ほとんど「昭和」の機材だったりする…。

…今(2021年)振り返ってみると、こうしてTNK撮影をしていたのは10年前だ。この10年で増殖した機材を考え…いかん、ここで考えるのはやめておこう(滝汗

赤道儀の入手に関しては、Vixenスーパーポラリスと望遠鏡(同SP150S)を、セットで5万円で古い友人から安く譲ってもらったものだった。実際にこれで撮影を始めてすぐに、鹿児島の知人からR200SSを安価に譲り受ける(強奪?)ということもあった。いずれにせよ普通に購入したものではなくて、かなり特殊な入手方法だったと言えるだろう。

安価な機材でなるべく本格的な撮影をする、ということでは、同じころにほんまかさんが「めざせ10万円で入選」という特集を組んでいる。ただ、これも10万円という制限を付けている関係で、入手方法が特殊だったり、改造・自作がてんこもりで、相当特殊な方法を取っていたりする(それはそれで、すごく面白いのだが…)。

ということで、ここでは少し考え方を変えて、新しいTNKプロジェクトを立ててることにした。名付けて

令和TNKプロジェクト


だ。ま、どっちみち大したことはできないのだが、ポイントはそこ。令和の今、安価な機材で、大したことはしなくても、なんとか「それっぽい」天体写真を撮ることができるかどうか、というのを私なりに検証して紹介していくという無謀な企画だ。狙いどころは、パソコン以外に、ほとんど機材を持っていない人がノータッチ直焦点でそれっぽい天体写真を撮れるまで試す、と言うものだ。これまでの経験から、導入機材は以下のコンセプトで行くつもりだ。

・できるだけ安価に揃えられること。
 但し、一品物やオークション等、同じ価格で買えないものは避ける。
・自動導入、オートガイドは含めない(高価になりがちだから)。
・メジャーで明るい対象を狙うことで、それっぽい写真が撮れればヨシとする。
・光軸調整など、機材のメンテナンスや対象導入の技術は持っているものとする。
 この辺の簡単な?調整や技術向上も楽しみの一つとする
・運搬手段、パソコン、画像処理は費用に含めない。
 電池も外したいが、この辺は代替品をてきとーにレビューするに留めるかも。

可能なら10万円以下で集めたいところだが、まず検討している機材でざくっと計算しても、15万円ぐらいはかかりそうだ。こういったパターンは天文機材に限らないが、あまり安価なもので揃えると、アップグレード時に全部入れ替えないといけないこともあるので、この辺のバランスは難しいところとなる。

まず検討したのは、自分の最初のTNKシステムとほぼ同じもの。新品で揃えるとなると国内高級品は無理があるので、安価なSkyWatcherになる。

・赤道儀:EQ5(+モーター+極軸望遠鏡)
・筒  :BKP130
・カメラ:FUJIFILM X-T20(中古)

TNKでM42
筒や赤道儀によって結果は変わって来るが、こんな感じの写真を撮れるようになるのが一つの目標となる
というところ。ここに行きつくには、自分なりの考えもある。単純に天体写真を撮るだけなら、ポタ赤+望遠レンズでもいいが、一般の望遠レンズだと焦点距離が短く、春の銀河とかは難しくなる。せっかくの「天体写真」なので、M51とかM104とかが、形が分かる程度には撮影したい。狙いは…

1)春の銀河の主なものぐらいは撮影したいので、最低400mm以上(換算600mm以上ぐらい)の焦点距離は欲しい
2)口径は大きいほど良い
3)赤ハロ、青ハロなど、色収差の激しいものは避けたい

2)3)の基準を考えると、どうしても反射望遠鏡になる。安価な口径80mmぐらいの屈折鏡筒の方が扱いやすいし、各種ピントや光軸調整の心配をほとんどしなくていいので、ことTNKで言えば手軽なのは間違いないのだが、青ハロいっぱいの星団写真を見て「わあ、綺麗!」とか言われたくないので、ここは基本、ニュートン反射で進めたい。

いや、まぁ、屈折が悪いわけではないのだが(実際、鹿児島に行って最初に撮影した頃は、晴れ丸で撮影してたし…)口径が大きい反射の方が、いろいろいじって楽しめる、というのもある。惑星を撮影し始めると、色収差もかなり効いてくるし、集光力はもっと効いてくるので、反射の方がいいかな、と思っている。 眼視だけなら、屈折や、それこそマクストフニュートンなんかもいいかもしれない。

反射でも、口径200mm、F4クラスが色んなものに使えてかなり便利だ。これは、以前R200SSでTNKをしていた身から言えば理想だと言える。ただ、20cm級を載せるには赤道儀もそれなりのものが必要になり、筒の価格もかなり上がる。安価なSkyWacherのBKP200でも、6万円近くはする。「最初のTNK」とするにはちょっと値が張ってしまう。

口径を落としていけば安く、軽く、コンパクトになりで扱いも楽になる。口径13cmクラスになると、BKP130で3万円。その他、チャレンジするなら安価なキットもいくつかある。

自動導入は考えていない(導入作業も楽しみの一つとする)のでだが、都市部や雲があったりすると、ファインダーで追い込む必要のない自動導入は魅力的な武器だったりする。なので、将来的に自動導入を組み込むことのできるSkyWatcherのEQ5やEQ35などは、お勧めしやすい機種だ。ビクセンのAP赤道儀なんかもコンセプトは悪くないと思うのだが、いかんせん高いッス…。13cm反赤のキットで、15万円近くする。しかもこれ、2インチ付かないかも…。

自動導入でも、経緯台式のAZ-GTiや、AZ-GTeであれば、意外と安価に購入できたりする。例えば、AZ-GTe 130Nなら、amazonで5万円、114Nなら4万ちょいだ。(いずれも2021年夏の時点)。若干値は張るが、都市部で自動導入による眼視や電視観望を主体とするなら、こっちの方がいいかもしれない。

一般的なカメラを使っての撮影には、バランス的に厳しいかもしれないが、CMOSカメラを使う、という前提なら、こうした機種で電視観望を主体に楽しむというのもアリだろう。ただ、今回の狙いは「一眼カメラを使って直焦点撮影をする」(もしくはそのレベル相当の写真を得る)、ということなので、ちょっと外れそうなので保留とした。AZ-GTe、お手軽という意味ではよさげだけどね。今後更に進化すると、1眼カメラ載せても余裕、とか、1眼カメラの安いのが無くなって、CMOSカメラの専用のを買った方が安くて手軽、とかになるかも…。

さて、では赤道儀と鏡筒はどうするのか?、当初は上記のEQ5+BKP130でいいんじゃね?と考えてた。EQ5には、極軸望遠鏡と2軸モータードライブを付けるとする。この赤道儀と鏡筒セットで96,000円ぐらいになる。後はカメラと小物があれば撮影までこぎつけられるので、これでかなり揃う、と考えてた。



計画的に?到着したSTAR QUEST P130Nキット。なお、猫は付属品には含まれません
が、すんげー気になるシステムが出てきた。サイトロンのスタークエストP130Nアップグレードキットだ。amazonだとこちら。後々のアップグレードや撮影の難易度を考えるとお勧めしにくいが、とにかく安い。赤道儀(+モータードライブ)+口径130mm反射で、36,000円ほど(※2021年夏時点)だ。実際には極軸望遠鏡とかが無いので、撮影するには相当工夫が必要だが、この安さは驚異的…

ピーンポーン!
…おや?何か来ましたね…。

いや実際少し迷ったのだが(この時点で既に買う気)、後々鏡筒だけでも遊べないか…と変に欲をかいて130Nにしてしまった。まぁ、後々レデューサーフラットナーとかで遊ぶと、焦点距離500mm→400mmになってしまいそうで、少し短いかな、と思ってしまったのもある。130Nなら、標準でF5、焦点距離650mmなので、レデューサーフラットナーで0.8倍になったとしても520mmと、それなりに確保できる(あんましかわらない?)。ただ、114Nの方が全体重量も2.5kgほど軽いので、手軽に始めるなら114Nの方が良いかも(後で判明するが、やはりこの赤道儀に13cmは厳しい)。

結局、13cmの大口径?の反射赤道儀が3万円で買えてしまう、という誘惑と、ポイント追加サービスに背中を押されてしまい、YahooショッピングでスタークエストP130Nをポチってしまったのだ。税込み28,680円。返品・交換不可商品ってのがちょっと気になったが、これはどうやらサイトロンジャパンさんからの直送なので、ショップへの返品不可ということのようだ。


組み上げてみた。それなりに立派な反射赤道儀キットである。
写真撮影に必須のモータードライブは、さすがにシュミットさんしか扱っていないようなので、こちらも発注。送料込みで7,130円であった。いずれの場合も、Yahoo!ショッピングなので、それなりのポイントバックもあったりした。

とりあえず、組み立ててみたのだが、やっぱり軽い!。いやまぁ、片手でひょい、とは行かないのでそこまでは軽くないが、最近はAXJ+ギガントだったりするので、そう考えるとむちゃくちゃ軽い。あんまし興奮しても仕方ないので、冷静になろう。目的は撮影なので、撮影できるようになるまで、いくつか確認事項がある。

1.極軸合わせを正確にできるか
  高度、方位をそこそこ合わせた上で、鏡筒やファインダー、そしてスマホのソフトを駆使して、1〜2分は追尾できる制度まで合わせこむ必要がある…できるのか?
2.カメラの準備と接合
カメラはおいおい購入するとして、とりあえず手持ちのX-T1ででも試してみるつもりだ。接眼部が1.25インチなので、それにカメラを付けてピントが出るのか(ネットの情報だと出ないっぽい…)出たとしても撮影に耐えられるのか、改造するならどこまでなら「一般的」と言えるのか…。

…あんまし変なことをやりすぎると、全然TNKではなくなるので、そこそこ遊んだら次のステップに進んだ方がいいかもしれん。まぁ、カメラが付かないとか、ピントが合わないとか、追尾精度が出ないとか…何もできないまま、本当に人柱になるだけの可能性も…(^^;;

…つづく。


令和のTNK機材になるか?


買ってしまったスタークエストP130N
あれこれ考える前に安さだけで買ってしまった?サイトロンのSTARQUEST P130N。3万円以下(2021年当時価格)で13cm反射望遠鏡と赤道儀が買えるのだから、恐ろしく安い。安いなりの理由は…

宅配便でやってきたスタークエストP130N、全体としては結構大きな箱だ。先のあんみつ(猫)と比べてれば、その大きさがだいたい分かると思う。ただ、口径13cmの反射赤道儀一式が収まっていると考えれば、そこそこコンパクトではある

中身は三脚と筒の箱が大きくて、ずっしり来る箱が二つ。ウェイトと赤道儀本体。このほかにも似たような軽い(実は空)の箱が複数。ずいぶん細かい箱が多いな、と思ったのだ、実は二つはスペースを埋めるための空箱だった(^^;

組み立ては難しくない。丁寧な取説も付いているが、赤道儀の仕組みを知っている人なら、マニュアル無しでも簡単に組み上げられるだろう。特殊なのは、赤道儀のクランプぐらいだろうか。回転軸に対して垂直に取り付けられた「フィン」の様なものがクランプになっていて、これをねじ込むことで固定されてクランプが締まる。締めたり緩めたりするのにちょっと力を入れにくかったり必要だったりするのが弱点だが、慣れれば分かりやすい。これはケンコーのスカイメモとかと同じなので、一度でも使ったことがあれば難しくは無いはずだ。

赤道儀は専用の三脚にしか取りつかないタイプ(底が平ではなく、出っ張っている)で、ネジ1本で下から締めるタイプなので、難しいものではない。ただ、取り付けていて気が付いた。

赤道儀極軸調整用の水平微動が無い

垂直方向も微動は無いに等しいが、サポートのための押しネジがあるので、これが実質垂直微動の役割を持つ。ただ、水平方向には微動機構が無い。ま、まぁ、元々眼視向けだろうし、方位と高度をてきとーに合わせれば、そこそこOKの精度しか考えられていないだろうから、これはこれで納得の仕様なのですが、撮影しようとすると後で少し厳しくなるかもしれない。

鏡筒と赤道儀の接合部はアリミゾだ。取り付けのネジがちょっと頼りないが、そもそも重い筒は乗せない仕様なので、こんなものだろう。赤道儀にカメラを乗せるネジが無いのが少し残念だが、鏡筒バンドの上に1/4ネジが一つ付いているので、そこでカバーできる仕様になっている。

で、メインの鏡筒。ファインダーは等倍のレッドドットファインダー。個人的にはちょっと苦手な部類だが、ファインダーの取り付け台座がビクセン互換のアリミゾ式なので、通常の6倍とか8倍の光学式ファインダーに交換しようと思えばできる。筒の材質は…磁石を持ってくるとくっついた。鉄板だ。軽いので厚みと強度は知れてると思われるが、後々の加工なども含めて色んな意味で安心できる素材と言える。

スタークエストP130Nの底蓋
STAR QUEST P130Nの底蓋、というかミラーセル部分。出荷前に光軸は合わせてあるという表記があるが、実際には全然あっていないし、主鏡側は光軸調整機構が無い。まぁ、斜鏡側だけでもあるだけマシなんだけど
筒の前後の黒い部分は、いかにも、なプラスチックだ。斜鏡のサポートや、ミラーセルも全てプラで、斜鏡のスパイダーは3本式。撮影するとスパイダーが6本出てくるタイプになるわけだが…この辺、どうなんだろう。斜鏡の光軸調整は、斜鏡ホルダー部に見える穴の奥にプラスネジが隠れていて、これで光軸調整できるようにはなっている。この辺、どこまでユーザーに求めているのかは分からないが、主鏡を見ると、きちんとセンターマークが貼ってある。む、おぬしなかなかやるな。

ミラーセルは…と思って筒の底を見ると、何やら文字が円形に書かれている。なになに… 「The primary mirror is always collimated in the factory before shipping」  (主鏡は工場で出荷前に合わせてあります)

…それはいいのだが、光軸調整用のネジ類が一切見当たらない。…なぬ?ということは光軸等が狂ったら簡単に修正する術は無いのか?。それとも狂わない、という自信か? まぁ、この辺色々機構を取り付ければその分コストアップになるのは間違いないので、難しいところだ。

ただ、これ、「光軸は合わせてあるからいじるな」、とも取れる。ほほぉう。それなら、確認するしかあるまい。コリメーションアイピースを持ってきて接眼部から覗いてみる。主鏡にはセンターマークが貼ってある(きちんと中央に貼ってあるかどうかは未確認)ので、割と簡単に確認できる。ええと…

… おもいっきりズレとる orz

イメージとしては、主鏡というより、斜鏡の方がずれてる感じだが、やはり初心者向けでこのズレ方はどうなのよ、というレベルであった。どこかで光軸修正方法を考えなければならんだろう。とほほー。

さて、鏡を正面から眺めてみると、爪が3つ見える。この向きは斜鏡サポートのスパイダーと一致…  してる? いずれにせよ、撮影画像に影響が大きいようなら、必要に応じて調整が必要かも。

外観を見ると、アリガタプレートと鏡筒バンドはそれなりのものが使われているようだ。バンドを緩めての筒の回転もスムーズだったので、見てみると筒側にはフェルトが貼られていた。こうしたところもそれなりにコストがかかると思うのでよくこの価格に抑え込んだなぁ、と感心している。逆に言えば、パーツ取りにいいかもしれない(ヲイ

カメラを取り付けて撮影する上で、とっても気になるのが接眼部だ。あぷらなーとさんも80mmの屈折望遠鏡で確認しているのだが、同じように接眼部を出し入れすると「めりめり」という感触があるのでガタ防止にプラダンが挟まれているようで、その辺の効果のようだ。確かにガタは少ないのだが、いかにも安いドロチューブで、プラっぽい(いや、プラスチックの)感じがする。また、筒外接眼部は長めで、(短い側への)調整代もあまりなさそうだ。カメラを付けてピントが出るかは微妙だ。とりあえず31.7mmのスリーブ−Tネジのアダプターを持ってないからそれを買わねば…と思って気が付いた。

スタークエストP130Nの接眼部
接眼部はドロチューブと先のアダプター(黒い部分)に分離できる。ここにTリングとかハメられれば光路短縮ができるが、ちょっと無理っぽい
接眼部は2本ネジで接眼レンズを固定する形なのだが、この固定リングの接眼側にネジが切ってある。これって…。Tリングをかましてみると、しっかり入ることが確認できた。これなら、(向きはとにかく)Tリングを用意するだけで直焦点撮影ができるはず。後はピントが出るかどうかだ。ピントが出なければ光路を短くする必要があるのだが、この黒いパーツは外すことができる。ただ、ドロチューブはプラで、更にφ39mm程度のピッチの粗いネジなので、合うアダプターは無い可能性が高い。

接眼レンズは2本、25mm(26倍)と10mm(65倍)が付属している。惑星を見るにはもうちょっと高倍率も欲しかったかな。amazonだと4mm(162倍)がおまけについてくるので、それが正解かもしれない。アイピースを覗いてみると、比較的広角っぽいので視界は広いのだが、とても「Long Eye Relief」とは思えない。10mmはゴム味口を折り曲げて裸眼で覗いても周辺部まで見るのは一苦労するレベルだ。レンズ間のつや消しがてきとーで、結構迷光を拾いそうでもある。ま、この辺の品質は価格を考えるとあまり突っ込んでもしょうがないので、オマケ程度に考えた方が幸せになれるだろう。

そして、本体を組み立てている間に、別途発注していた「アップグレードキット」が届いた。要はスタークエスト(と、AZ-GT AVANTE)専用のモータードライブとなる。6千円ほどなので、この手のモータードライブとしては破格の安さだ。取り付けは比較的簡単だが、一応詳しく書かれた取説が付属しているので、読みながら取り付けを進める。

モータードライブ底面はスチール板みたいで、わりとがっしりしている。取り付け前に、赤道儀の赤経微動ハンドルの根元にある「ゴムカバーを外してください」、とある。え?そんなのあったっけ?と思ったら確かにある。ただ、取り付けてみても、このカバーが邪魔になる感じはしない。外したカバーをどうしようか、と悩んだが、反対側の根元にはカバーが無かったので、そちらに付け直しておいた。

スタークエストP130Nのモータードライブ
別途購入したアップグレードキット(モータードライブ)。最終的にこの精度が不十分なのでTNKをあきらめることになったのだが、もしかしたらもっとうまく使えれば撮影とかも行けるのかもしれない…
取り付けは、2本の六角ネジで本体に付けて、その後微動ハンドル部分にイモネジで固定するだけだ。微動ハンドル部分の固定はちょっと苦労するかもしれない。電源は単三電池2本で、お手軽なのだが、外部電源には対応していない。まぁ、やろうと思えば改造含めて方法はいくらかあるだろうし、単三2本で一晩ぐらい持つなら、無理に外部電源にするほどではないかもしれない。

クラッチがねじ込み式なんだが、「強く締めたり、緩めすぎたりすると壊れます」とある。ただ、結構な締め代があるので、どれぐらい締めたり緩めたりするのが正解なのか正直良く分からない。この「分からなさ」が後で悲劇を生むことになるとは…。

さて、赤道儀本体に戻ろう。緑色でデザインアクセントにもなっている目盛環は、赤経側はガバガバで、どれだけ役に立つか未知数だ。使う人、いるのか…?。それよりも赤緯側は、鏡筒で北極星の導入をするなら必須(まぁ、筒が垂直のポイントに印を打つだけでもいいのだが)なので、こっちがしっかりしていればと思ったのですが…。よく見ると、数値がなんか変だ。本来筒を北極星に向けたところで、矢印が示す部分がほぼ「0度」を示している。で、赤道付近を向けると90度…逆じゃん!?

この赤緯側の目盛環はしっかり固定されているので外すこともできない。どないしょー?とりあえず思いついた方法は、北極星を向けた所で、90度のところに別の「印」(矢印)をつけること。今後はそれを読めば、それっぽい緯度になるはずだ。(と言いつつ、結局この目盛環を使うことは無かった。まぁ、そういう種類の赤道儀だと言ってしまえばそれまでだが)



STARQUESTミラーセル自作と光軸調整


スタークエストの主鏡部分。固定は4本ネジ
スタークエストP130Nの主鏡部分。筒に4本のネジで固定されているが、実は接着剤?も使って固定されている。また、筒のネジ穴には少し遊びがあるので若干の光軸調整も可能

さて、なかなか撮影までたどり着かないのだが、とにかく一眼レフカメラが装着できることが分かったので、実際にカメラを取り付けて試してみた。が、そのままではピントが出ないことが判明した。やはりもっと短くしないと(カメラを主鏡側に近づけないと)ピントが合わないのだ…。ま、まぁ、これは想定通りだな(滝汗

TNKで撮影するためには、PCが必要となるCMOSではなくて、できれば一眼カメラを使いたいところ※1。ただ、いずれにせよ、ピントを出すために何らかの改造は必要となる。後は、接眼部か、主鏡のどっちを改造するか、ということになる。※2 接眼部を改造するには、何らかのピント調整装置と、鏡筒への取り付け方法を考えねばならない。ケラレや強度なんかを考えると、こちらの方が正解だとは思うのだが、これなら確実、というのを思いつけていない。やっぱり接眼部ってのは力を入れなければならないし、コストもかかるというものだ。

もう一つは、ミラーを前にシフトする、という方法だ。これはギガントでも経験済み。何はともあれ、今のミラーがどのように設置されているのか、バラしてみることにした。工場で出荷時に光軸を合わせてある、ということは、主鏡側にも何か調整するための秘密が隠されているのかもしれない。まだ一度も星を覗いていないのにバラしていいのか、というのはあるが…。どうせ光軸はあってないみたいだし、ワクワクしながらどんどん行ってみよう(^^; 

主鏡部分は、セルごとネジ4本※3で鏡筒に固定されているように見える。セルはプラスチック一体型だった。とにかく4本のネジを外して、引っ張れば取れる…と思ったのだが、なかなか外れない。これは想定外。筒を足で挟み込んで、悶絶しながらえいやっ、と引っ張ると「バコッ」と音がして外れた。良い子はこんな乱暴な真似はしてはいけません(^^;。

改めてネジで止めてあった接合部を見てみると、少しプラが溶けたような感じで、単純にねじ止めしてあるだけでなく溶剤を流し込むか何かで、軽く接着してあったようだ。それほど強力ではないので強めの力を加えてやれば外れたが、外すときにミラーを傷つけないように注意が必要かもしれない。

主鏡をバラしてみる。光軸調整機構は無いが、造りは一般的
主鏡をバラしてみる。光軸調整機構は見当たらないが、造りは一般的。鏡を前にシフトするためには、ミラーセルを自作しなければならない。
セルは裏蓋と一体成型のプラスチック(恐らくABS)で、鏡は3つの爪で固定されている。この爪はよくある固定爪(ゴム製)で、ネジ6本を外せば、ミラーが外れた。ミラーセルにはクッション用のコルクが貼ってあるが、あくまで裏蓋一体型。特段の調整機構とかは見当たらない。筒とセルの精度で組み上げてているだけ、のように見える。もしかしたら、その精度が「秘密」なのかもしれないが、まぁ、眼視向けならこのレベルでもいいと考えられているのだろう。

このセル、鏡筒の内径より小さければ、ギガントで鏡を前にシフトしたように、鏡筒にちょっと穴をあけるだけでなんとかなるのだが、裏蓋を兼ねていて内径より小さくできそうにない。となると…

・セルを新しく作って、内径より小さくして固定用のネジ穴を追加して前にシフトする

というのが一番やりやすい方法の様に思える。ただ、セルへの固定方法や、光軸調整など、いくつかハードルは残るので、簡単ではないだろう。この辺、3Dプリンターを持っている人なら、自作のセルを造ったりして簡単にやってしまいそうな気もする。
…3Dプリンターが欲しくなってきましたが、それはまた、将来の楽しみに取っておくことにします(ヲイ

主鏡側は調整機構が特にないのでしっかり合わせることは不可能なのだが、主鏡セルを止めてある4本のネジを緩めると、少し遊びがあって、いくばくか調整ができる。筒も小さいので、光軸修正アイピースを覗きながら、片手でグリグリと動かしてみて、そこそこあったところでネジを締めなおせば光軸調整はできる。普通はこれぐらいで妥協して、後は眼視用途で使うのが一般的だし、そうするべきだろう。

しかし、このままでは撮影ができない。まずはミラーを前にシフトする方法で考えてみた。構想としては、ギガントのセルの様に板を三角形に切って、その頂点側面に合うように鏡筒に穴をあけて、そこで木ネジで固定するというものだ。ミラーは板にサポートを立てて、ゴム爪で固定するか、側面からテープで固定する方法を検討する(といいつつ、結局両面テープで固定してるけど)。光軸調整は、今と同じでネジ穴の遊びを利用する、というわけだ。

セルを木で作る
鏡を奥まったところに固定するためにミラーセルを木の板で作る。1x4木材を三角形に切り出して筒に合わせて調整する。
そもそも、付属のミラーセルは一般的な?鏡筒に「かぶせる」タイプなので、そのまま使ったのではミラーを奥に入れることはできない。なので三角の板を使ってミラーセルとするわけだ。

素材としてはアルミニウム板を使うのが理想なのだろうが、それだと固定用のネジ穴をあけてタップを立てるなど結構面倒だ。そもそもがTNK(て・ぬ・き)なので、そんなに複雑なことはしたくない。あまり推奨できるものではないが、使ったのは1x4の木材。これは丁度切れ端があったから使ったのだが、本来ならもう少し大きめの板を使った方が良さそうだ。

まず、Wordで内径に相当するφ160mmの円を書き、その中に、セル用の正三角形を重ねる。これを印刷して、円と三角形に合わせられるようにして板を切り取った。実際には円の大きさ分の板の幅が無かったので、正三角形からはちょっと違う形になっているが、接続する頂点部分がしっかりしていればいいのだ。いーかげん。

木製にした理由の一つは、セルの固定に木ネジが使えるからだ。これならタップを立てる必要も無く簡単に取り着けられる。但し、何度も着脱するのには向いてない。次に三角形に切ったセルを鏡筒に差し込んでみて大きさを確認し、必要に応じて先端部をやすりで削り、適当な大きさに調整していく。

そして鏡筒に取り付けるために穴をあける。ここだけは金属加工が必要になる。まずは既存の鏡の位置から50mm以上手前になるように位置を確認し、紙帯を使って1/3周ごとに印をつけて、ドライバードリルで穴をあけてみた。鏡筒端部からは60mmの位置、3か所にφ4の穴をある。多少光軸調整ができるようにするのと、バリ取りも兼ねて棒やすりを使って穴を少し前後に広げてやっておいた。

穴をいっぱい開けてしまった
手製のミラーセルを固定するために鏡筒に穴をあける。ピントを確認してみたらアイピースでピントが合わなかったので結局もう一つあけることになった…
木製三角セルの頂点部分に印をつけて、鏡筒に通して、あけた穴の位置と合わせる。たいてい少しズレている(ずれているのはいい加減な加工をしている俺だけ?)ので、穴側から、鉛筆でネジを立てる位置に印をつけて、キリで少し穴あけをしておく。この後、木ネジをねじ込めば固定できるわけだ。

後は、この木製セル、ちうか、ただの三角の板に、どうやってミラーを固定するか、だ。色々方法はあるかと思いますが、今回はシンプルに両面テープを使ってみた。ただ、そのままだとはがせなくなる可能性もあるので、一応、はがせるテープとしていわゆる「魔法テープ」を使ってみた。これはギガントのミラーを固定できないかな、と思ってamazonで買っておいたものだが、探してみると似たようなクリア両面テープは結構ある。板の方にしっかり付くのか、いざとなった時にはがせるのか、正直不安な面は結構あるのだが、とにかくやって見ない事には始まらない。えいやっ、と貼り付けした。あ、そう言えば貼ったところの写真を撮り忘れたな。

実際付けてみると、意外と強力に張り付いた。もしかしたら二度とはがせないかもしれん…が、まぁ、使えればOKとしよう(ヲイ
念のため、落下防止にアセテートテープでサポート固定をしておいて、セルとしては完成とした。光軸調整システムはここには作り込まず、セルを鏡筒に固定する部分で調整することにした。

後はセルを鏡筒に木ネジで固定し、光軸を調整して完成だ。木ネジを固定する位置を微妙に調整して主鏡光軸調整するので、ネジの固定と調整代が微妙だと、ちょっと苦労するかもしれない。

で、5cmほどミラーを前にシフトしたので、これで一眼レフカメラを取り付けてもピントが合うはずだ。Tリングを取り付けて、カメラを付けて月を撮影してみると問題なくピントが合う。が、ドロチューブを3cmほど伸ばしたところでピントが出ている。ここまで延ばす必要性はないのだが…。

カメラはこの位置でピントが合う。ギリギリだ
カメラはこの位置でピントが合う。ギリギリだ
更に、アイピースで月を見てみる…んが!。ピントが合わない。orz…
元々のピント位置が鏡筒から50mmぐらい伸ばせば、と考えて、50mmほどミラーを前にする必要があると勝手に思っていたのだが、どうやらそれだと縮め過ぎたようだ。アイピースのピント位置を考えると、後30mmほどミラーを後ろにずらす必要がある。ただ、そうすると今度は一眼レフを付けた時のピント位置がギリギリになって…。この辺、結構シビアなピント調整になる。

そして2回目の穴あけで、結局30mmほど後ろにずらした。鏡筒端部から言えば、29mmほどの位置に穴をあけ直している。実はこれでもアイピースのピントはちょっと足りない。足りない部分は、アイピースの固定をちょっとだけ差し込みを調整して(少し差し込み量を減らして)なんとかしている。ちなみに、写真の右上、変な線が鏡筒に入ってますが、穴あけ時にヘマをして、傷をつけてしまった。難しい作業ではないとは言え、やはり、鉄板に穴をあけるのは少し面倒だ(^^;

逆に、一眼レフのピント位置は、ドロチューブを3mmほど伸ばした位置でギリギリピントが来た。これ以上位置を後ろにずらせるのは危険な気配だ。こんなに調整がギリになるとは思っていなかった。難しいな、こりゃ。さて、これで筒は直焦点撮影ができるように「は」なった。いよいよ次はTNKの撮影に…とその前に、実はまだもう一つ問題があったりした…。

つづく…


頑張れども限界も


スタークエストでオリオンを狙うが…
令和TNKとしてチャレンジしてきたスタークエストP130N。仕上げとしてオリオン大星雲がそれなりに写るか撮影に挑んだ…が…

さて、ミラーセルを自作して、なんとか撮影できる体になったスタークエストP130Nだが、実は光軸の問題が残っていた。というのも、接眼部のスケアリングのずれが相当に大きいのだ。これは、セルを自作して、斜鏡、主鏡とも光軸を合わせたことで、よりはっきりしてきたのだと思われる

具体的には…光軸を調整して、さてしっかり撮影を…と思ってドロチューブからミラーを見たのだが、なんか変だ。どう見てもだ。本来なら、斜鏡サポートの3本のステーが、均等な位置に見えるはずなのだが、ものすごくずれて見えるのだ。この辺、斜鏡や主鏡を調整して光軸を合わせても、きちんとした位置にはならない。

考えられるのは、接眼部のスケアリングがずれているという事でだ。というか、こんなにずれていると、スケアリングとか言うレベルではないよな(^^;。もう取り付け精度というか、部品の精度レベルでどーなのよ、という気がする。まぁ、接眼部もプラ製なので、この辺が部品精度の限界なのかもしれない。

これを調整するためには、接眼部の取り付けをなんとかしなければならない。この取り付け部は3本のボルト・ナットで締められているがそれを緩めて、少しずらしてみると、確かに光軸の中心が斜鏡の中心になりそうな気配がしてきた。

後はスケアリング調整用に…何か適当な厚みのプラ板を挟めば良いのだが、そんなものは手近に…おお、困ったときのPETボトル。いつものこれを使うことにした。1.5Lのペットボトルをはさみで切って、いくつか重ねてスケアリング調整用に鏡筒と接眼部の間に挟み込んでみる。

接眼部から改めて覗いてみると…
接眼部から改めてのぞき込んでみると、明らかにスケアリングがずれている。接眼部が鏡筒の中心部を向いていないようだ
接眼部にPETボトルの切れ端を挟み込んで調整する
接眼部にペットボトルの切れ端を挟み込んでスケアリングを調整する。この後この切れ端がずれないようにテープで止めて完成だ
ボルトを緩める緩め代の関係もあり、スケアリング調整は完全にできたわけではないが、そこそこそれっぽいレベルにはなったようだ。これでネジを締めこんで、同時にPET板がずれないようにアセテートテープで固定しておく。とりあえずはこれで光軸調整は終了とした。ふうううぅぅ。

改めて、調整後に月面を見てみた。10mmのアイピースを付けて拡大(75倍)してみても、以前見た光軸があっていない、あの、いや〜な感じの見え方(どこにもピントが来ないイメージ)は無くなって、すっきりと見える(って、これ、前にも書いたような…)。今回は周辺部を見ても、位置によってピントが変わるような変なイメージない。これなら、撮影しても変な形にはならない…はずだ。

さて、鏡筒側のあれこれはここまで。本当は、レデューサーコマコレを試してみたいのだが、それは撮影が確認できてからにしようかと思う…。

次は、赤道儀とモータードライブの確認だ。結構問題がある。というのも、何度か月面観察とかをしているのだが、とにかく追尾が安定しないのだ。モーターの精度というよりは、ウォームギア側の問題のような気がしていて、この辺、もう少し確認&調整が必要かもしれない。令和のTNK。安価に進めるためには、思ってたよりもハードルが高そうだ…。もうどこかで諦めて、もうちょっとしっかりした赤道儀とかを買った方が早い…(^^;;

さて、問題の赤道儀。モータードライブ(アップグレードキット)があるので追尾はできるはずなのだが、実はちゃんと動くようになるまでちょっと苦労があった。おおまかには次の3点だ。

モータードライブを付けた状態
アップグレードキットというモータードライブを付けた状態のスタークエスト赤道儀。これで最強のはずなんだが…

1.まず、赤経微動が渋い


そもそも、赤緯微動は割とスムーズで、かつガタもほとんど無いのだが、赤経微動は、ガタが大きく、かつなんだかスムーズではない。ウォームネジを調整するようなネジが一つあるのだが、これを締めたり緩めたりしても、あまり変わらない。動きとしては、少し硬さがあって、少し回していくと何かの拍子に「スルッ」と動くような感じがある。かと思えば、硬くてなかなか回らないようなことも。モータードライブを回していてもその辺が顕著で、全然動かないこともあれば、突然増速して星を追い越していくこともあったりする。こりゃあ、アカン…。

この渋いのは、とりあえずグリス不足ではないかと踏んでみた。可能な限りバラしてウォームギアを見ると、その両端にはグリスを塗ったような跡はあるのだが、歯面にはなんだかグリスがなさそうなのだ。そのままではバラすことができない構造なので、とりあえずつまようじにグリスを取って、それを隙間から差し込んでウォームに塗ってみた。位置を変えて何度か塗り込み、その後で全周微動で2回転ほど赤経を回してなじませる。

…なんということでしょう。

あれほど渋かった微動が、驚くほど?(いや、ちょっと大げさか?)スムーズに回るようになった。引っかかるイメージはほぼなくなり、モーターもスムーズに回っている気配でだ。しかし、問題はこれだけではなかったりする。

2.赤経ウォームネジの固定が緩んでいた


実は購入当初から気になっていた赤経側のガタ。赤緯側はほとんど無く、微動ハンドルを動かしても、リニアに反応してくれるのだが、赤経側はスカスカなイメージで、普通にウェイトを持って動かしてもガタガタ言うような状況だった。ガタは微動ハンドルで半回転近くあっただろうか。なので、クランプを締めてモータードライブを駆動しても、駆動力がかかるまでに最低でも5分、ヘタしたら10分近くかかるんじゃないか?と思わせる状態なのだ。ただでさえ増速ボタンとかのないドライブなので、これは結構致命的だった。

奥まったところにある同軸ネジ
赤経微動ハンドルの同軸に奥まったところにある固定ネジ。こいつがゆるゆるに緩んでいたため、赤経側に大きなガタがあった
ウォームとホイールのかみ合わせを調整するネジらしきものはあるので、そのネジ(ウォームに垂直に当たるネジ)を調整してみたのだが、かみ合わせが変化するだけみたいで、ガタそのものは全く変わらない。これは…違う…

他に何か調整か、固定か、何らかのネジがあるはず…と探し回ったのだが、なかなか見つからない。最終的に見つけたのが写真の軸に並行のリングネジだった。どうやら、このネジでウォームを固定しているっぽい。しかし、この手のネジは簡単には回せないのが普通だ。カニ目レンチなんか持ってないし、持っていたとしても、この狭い所に入る気配はない。

専用のパイプ型の工具でも無ければ、こんなもん締められんよなぁ、と半ばあきらめつつ、精密ドライバーを突っ込んで「爪」の部分をいじってみた。

…なんということでしょう。

ほとんど力を入れていないのに、そのネジがするすると回るではありませんか!?。
…締まってなかったんかーい!

心の中で盛大にツッコミを入れながら、ドライバーで締められるだけ回して締めていきます。少しドライバーに力を入れて押さえれば、簡単には緩まないぐらいまで締めこむことができて、かつ、ガタが相当に小さくなった。ここだったのか…。うう。さて、ここまで来れば、後はモーターがきちんと追尾してくれれば撮影はできるはずだ。そして最後の難関は…

3.クラッチネジを緩めすぎて斜めに入っていた


このモータードライブ(アップグレードキット)だが、設置そのものは難しくない。ただ、クラッチがネジ式で、締め込みや緩めるのをどれぐらいすればいいのか、今ひとつわかりにくいのだ。何度かテストして追尾撮影もしようとしたのだが、追尾はするものの速度がまるで足りなかったりと、妙な動きをするようになってしまった。

これは変だ!?と思って、11月の小海星まつりに行った時に、販社サイトロンの方に持っていって聞いてみた。担当の?方は、少し回してみて「ああ、これはクラッチが外れて斜めに入ってますね。バラしてクラッチネジを正しく入れなおさないといけませんね」という話でした。え?斜めに入ってる?

そもそも、このクラッチはネジを締め込んでクラッチON(Lock)、緩めてクラッチOFF(Unlock)なのだが、締め込むときもカチッとしたものは無くて、じわっと締め込んで「この辺で固定されたかな?」と「感じる」しかないのだ。ロックされたと思っても微動を回してみるとまだ結構回るとか、なかなか難しいところがある。緩めるのもかなり緩めないとクラッチが外れないイメージなので、気が付いたら必要以上に緩めていたのかもしれない。

家に帰ってからこのクラッチネジを確認してみると、確かに少しナナメに入っていたかも。バラしても完全に外すことはできなかったのだが、完全に外れた状態から、しっかり正対させてねじ込むと、どうやらきちんと入ってくれたようだ。

改めてクラッチの状況を確認してみると、ねじ込んできちんとロックされる状況から、4回動かす(1回で1/3回転ぐらいなので、1.3回転ぐらい?)で外れる、ロックされるというのが切り替えられるようだ。これ以上回してしまうとねじ込み過ぎたり、ネジが外れたりすることがあるだ。適正にネジが正対していて、ロックされれば、動力伝達もきちんと動作して、そこそこしっかり?追尾される状況にはなった。

さて、ここまで来てようやくまともな撮影だ。ここまで鏡筒主体で改善を加えてきたのだが、いよいよ赤道儀も活躍できる。極軸設定については、極軸望遠鏡が無いのできちんと合わせきることはできないが、極軸側に目を当てて、なーんとなく北極星をにらんで、それらしき方角には合わせた。実際、これでしばらく星を見てても、それほどずれる気配はない。よし!撮影ぢゃ!

撮影に当たっては、狙えるものがある程度限られる。そもそもこの日は半月過ぎの月が出ていたので更に厳しい状況だったが、スタークエストP130Nに付属のファインダーはレッドドットファインダー。これを使って導入できる被写体は、基本、はっきりと眼視できるものに限られる。2等星と重なっているとか、もしくはすぐそばとか…。まぁ、おのずとM42になるわけだが、今回は近くに月があっただけで、M45を狙うという方法もあったかもしれない。また、テストの段階ではh・xを狙ったこともあった。

月明かりもあるのと、極軸の精度などから露出は控えめ、30秒とした。M42は明るいのでこれでも十分写るはず…と、ようやくというかなんというか、撮影ができた。ピントが出ない問題から始まって、モータードライブの問題など、我ながらよくここまで頑張ったな、と思う。

…が、世の中そんなに甘くはない(またかよ)。先の完成画像を見てもらえればなーんとなく想像がつくと思うが、とにかくブレブレというか、ガイドできていないのだ。極軸は多少甘くとも、30秒露出ならピリオディックモーションの影響も含めてそーんなに変にはならないだろうという目論見は、見事に打ち砕かれてしまった

これが、一定方向のズレなら、まだ極軸の調整やモーターの調整でなんとかなるかも、と思うのだが、縦横入り混じったランダム…?なズレとなっている。今回、YIMGで無理やり合成しているが、もう正直ここまで…と諦めることにした。本来なら、ここから精度アップの調整や、被写体を変えての撮影、コマ収差の調整方法の検討…などなどを進めようかと思っていたのだが、いやはや、そんなレベルではなさそうだ。まぁ、そもそもの赤道儀がそれほどの精度は無いのだろうし、まだどこかにガタがあるのかもしれない。

なんとか撮影までこぎつけたM42
スタークエスト 13cmF5で撮影したオリオン大星雲  FUJIFILM X-T1 SkyWatcher スタークエストP130N(750mmF5.0 30secx8 ISO1600) アップグレードキット ノータッチガイド YIMGでstack+PaintShopProとIrfanViewで調整
とにかく、これ以上色んなところをつつきまくっても精度向上を見込みにくい事、この時点で既に一般の方が対応できるレベルを超えて改造や調整をしまくっている事、こうした背景を勘案して、このスタークエストによるTNKは、これにて終了ということに決定した。
いや、まぁ、悪い機材ではないのだがな…。光軸の問題はあるものの、眼視で使う分には、とりあえず問題は少なそうだし、暗い夜空の下でディープスカイを軽く堪能する分には、安価で良い機材だとは思える。

ただ、こうした安価な機材にありがちな「使う人の技量を要求する」というのは、避けられなかったのと、TNKで撮影に使うには、やはり無理があった、ということだ。

今になって思えば、この13cm反射にしてしまったのも失敗かもしれない。ピントや光軸の件を考慮すれば、7cmぐらいの屈折にしておけば、焦点距離や色収差の問題はあるにせよ、もっと気楽に、かつ重量や価格も抑えられて購入できるので、便利に使えたかもしれないのだ。

実際、昨年11月の月食の時には、ウェイトも付けずに8cmマクカセを乗せて、眼視用としてすごく便利に使えたりした。7cmぐらいまでの短焦点屈折ならば、同様に手軽に便利に使えそうな気はする。後はちょっと三脚がかさばるので、この辺に工夫代が残ると言えば残る。

…ということで、超安価なスタークエストを使った令和TNKは、おしまい。この、残ったスタークエストをどうするよ?という問題はあるのだが、こんなの、誰も買ってくれそうも無いので、しばらくはお蔵入りなんだろうなぁ。買ったげるよ、という奇特な方がいらっしゃれば検討はするが、基本、初心者お断りな機材なので、そこはご注意いただきたい。

色々あって遠回りしているのだが、令和TNKは、一旦振出しに戻る。令和TNKにふさわしい機材は何になるか、改めて検討したいとは思うのだが、実は次なるチャレンジは既に進んでいたりする。多分、皆さん想像している通りになるんぢゃないかと…。まぁ、うまく行くかどうか、それはお金のかけ方次第…?


なお、本HPで紹介している「令和TNK」は、これまでブログ「玄の館 ブログの部屋」「令和TNK」で紹介してきたもののまとめたものです。気になる方は是非ブログもご覧ください。
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