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☆玄の館 別館 しまなみ海道☆
朝6時半に到着直後、撮影した朝もやにけむる来島大橋
★しまなみ自転車海道往復記'03−その4−★

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 2003年のゴールデンウィーク。朝早く起き出して自転車を持ってしまなみ海道へと繰り出した。なんとか片道を走破。昼飯を確保して後は帰るだけ。しかし、そこには疲労という大きな壁が待ち構えていた。
●カラフルかつ便利な渡船●

カラフルな渡船  順調に尾道まで到着したのだが、帰りは疲労がたまってきている。はたして予定通り18時に今治へ帰れるのか。ただ今執筆中。請うご期待。 どこの渡船を渡ろうかな、とぼんやり海を眺めていたのだが、なにやらカラフルな船が行き交っている。前回尾道まできたときも見かけた船だ。あまりに飾りつけられていたので、この船は遊覧船かなにかで、料金も高いのかなぁ、と思っていたのだ。

 ところが、良く見ているとこの船、目の前、すなわち尾道駅前の渡船乗り場にするすると乗り込むではないか。なんのことはない、普通の渡船なのだ。前回使った渡船乗り場はここから少し距離があるため、疲れもあるのでここから乗れるのはかなりありがたい。乗らない手は無い。ということで、吸い込まれるように渡船に乗り込んだ。料金は110円。これだと前回の渡船より安いではないか。駅が目的ならこっちの方が近いし、いいぞぉ。時刻は丁度一時。とりあえず来るときと同じようなペースで帰ることができればなんとか目標の18時にサンライズ糸山まで帰ることができる。はたして。

 渡船の到着したのは大き目の道路。国道との交差点まで出てくると、どこかで見た景色。そういえばここは来るときにやたら新しくて広い道路だな、と気になった場所だ。こんなに便利なルートがあったとは。次に来ることがあればぜひ利用しよう。ま、どちらにしても今は尾道に向かってスピードを上げなければならない。昼の間にじっくり休んだはずだからそれなりに疲労も回復。スピードはそれなりに出て…というところで異常に気が付いた。

●スピードメーターの故障●

 スピードメーターの速度が0のままなのだ。メーターそのものは尾道駅に到着したときに76kmを示していたので、その辺まではちゃんと動作していたはずだ。しかし、今確認してみると速度は一切表示されない(0kmのまま)だし、距離も全然加算されない。ユニットは着脱できるので接触が悪くなったのかな、と思って少しつけたり外したりしたのだが、やっぱり反応なし。どうやらほぼ故障してしまったようだ。どちらかというと、疲労がたまってくるこれからの方が速度計が大事になってくる。今のタイミングで故障したのは少々辛い。(後日調べてみたのだが、どうやらフレーム側に設置してあるリードスイッチ(車輪側に設置した磁石を感知するセンサー)部の感度が恐ろしく悪くなっていて、ここが故障したようだ。そんなに酷使したつもりはないのだが…)

 しばらくごそごそしたのだが、どうしても直らないのであきらめてとにかく自転車を進めることにした。とにかく距離的にはまだ半分なのだ。平らな道路がほとんどの向島は特に問題なく通過できた。因島大橋を渡りきったところで時刻を確認すると13時50分。尾道から50分程だ。かならずしも早いペースではないが、特に遅いわけでも無いのでこのまま行けばほぼ問題ない。ちなみに時刻がきちんと記録できているのはデジカメのおかげだ。事あるごとに自転車を止めて写真を撮っているので、そのときの時刻が記録されている。おかげでどのへんを何時に通過したというのがすぐ分かる。なかなか便利だ。しかし、この辺でスタート時に用意しておいたドリンク類が底を付いた。合計1リットルぐらいなので無くなるのも無理は無い。どこかのコンビニで追加を調達しなければならない。5月前なので暑さはあまり感じないが、水分補給は重要だ。

因島フラワーパークで一休み。失敗はこの後のショップで…
●水分の次に必要なもの●

 因島の帰りのルートは前回と同じく西側を迂回するルートだ。来た道、国道を通るとあのゆるやかな坂道を延々登る羽目になってしまうのでそれだけは避けたかった。大浜海水浴場のブロントサウルス?やモアイを後にして、どんどん進んでいった。やや複雑な自転車道になるのだが、去年通った道なので迷いは全く無い。途中の坂道では無理をせず降りて押したり、因島フラワーパークでトイレ休憩をしたりしながら運動公園の手前までやってきた。実はここにコンビニがある。ここで水分補給用のドリンクを2本ほど購入した。だいたいこれで帰りは行けるはず。はずだった。ここでの購入時に失敗をしてしまっていることに気が付いたのはもうしばらくしてからだった。

 向島に比べると因島はそれなりにアップダウンがある。前回再会した「ラーメン三吉」まで到着したときには結構疲れもたまってきていた。「ラーメン三吉」はしっかり営業していたのだが、その2FLにあったはずの「因島郷土民族資料館」の看板はどこかへ消失していた。結局謎だけが残ったのである。まぁ、どうでもいいといえばどうでもいいのだが(^_^;)。問題だったのはこのときに手をつけたドリンク。スポーツ系のドリンクを買ったつもりだったのだが、実はアミノ酸サプリメント系のドリンク。ほとんどカルピスみたいな味なのだ。「しまった」と思ったのだが、今更買いなおすのは癪だし、とりあえず水分補給はできるので問題ないかな、と思い直して先を急いだ。

 生口大橋は例によってアプローチが長い。みかん山のなかをうねうねとうねるアプローチを登っていくと、次第に体力が奪われていくのが目に見えて分かるようになった。結構ヤバイかもしれない。ただ、今のところ体のどこかが局所的に痛いとか足がつりそうだとかの症状は無い。時刻は2時40分。向島で1時間ほどかかっていることになる。あとは精神力が勝負になってくるが、とにかく止まらない、先に進むことを心がけた。

 生口島は来たときと同じ、南側の国道を走ることにした。今までのパターンだと北側を走るのだが、距離的に少し長そうだし、今回はみやげもの屋に寄るつもりは無かったのでとにかく走る走る。走る走る。来るときはほとんど気にならなかったのだが、この南側のルートには結構アップダウンがある。大島の坂道に比べると「へ」みたいなもんなんだが、疲れた体にはそれなりにこたえる。体力はかなり落ちてきているようでスピードも上がらないもんだから余計こたえる。ついでに言うと平日なのでほとんどサイクリング仲間ともすれ違うことが無く、孤独がこたえるのだ。うう、辛い。

一休みした後、幸せの鐘の前で撮影。少し日が傾いてきている
●ここから先は気力の世界●

 多田羅大橋が見えてきたのは15時半ぐらいだ。距離の割には時間がかかるようになってきているのが分かる。ここから先はアップダウンが更に激しくなるため、心してかからないとひどい目に合う。だんだん疲れた体にムチ打つようになってきていたが、考えてみたら既に100km以上を走っているのだから疲れるのは当たり前だ。この多田羅大橋のアプローチもヒイヒイいいながらかろうじて登りきった。

 多田羅大橋を渡りきった所にある多田羅しまなみ公園で一休み。ここまで疲れてくると、やはりそれなりに汗をかいていることもあり体が塩分を欲しがっているのが顕著に現れてくる。さきほど購入したドリンクは甘いだけで塩分が入っていないため、汗で出て行く塩分が補いきれていないのだ。うう、やはり失敗している。しまなみ公園の売店で何か腹ごしらえを、とも思ったのだが、喉が渇いていて少し暑かったこともあって、しばらく悩んだ後ソフトクリームにしてしまった。チキンナゲットという手もあったのだが、今熱くて腹にもたれるものはどうも…ということで遠慮してしまった。

 出発前に「幸せの鐘」の前で撮影したのだが、このときが16時丁度。休憩時間もあったのだが、思ったより時間を食っている。来た時と同じような時間で帰ることができれば目標の18時までに帰ることができるのだが、体力状況を考えるとちょっと無理っぽい。幸いにも風はほとんど吹いていないか、微風なのでここで体力を奪われることはなさそうだ。スピードメーターが無いのでペース配分はいまひとつはっきりしないけどできるだけ前に進もう。

 大三島大橋まで来ると、疲れはだんだん分からなくなってきていた。疲れていないわけではないのだが、ペース一定で進んでいるので後はほとんど精神力だけで進んでいるような状況になっているのだ。うう、危険な兆候だ。ここに来て少し風が出てきているようで少々不安になったのだが、結果としてこの後も不具合が出るほど風が強く吹くことは無かった。最後まで天気が良かったのも幸いだった。

夕闇迫る下田水の港。魚の像がユニーク
●そして最後の難関●

 伯方島はアップダウンが結構あるのだが、あまり苦労した覚えが無い。ほとんど通過点でしかないということもあるが、疲れていたので色々考える余裕が無くなって来ているのも影響しているのだろう。元々通過距離の短い伯方島を通過し、なんとか伯方大島大橋まで上りきった時には16時45分になっていた。疲れた身には比較的距離の短いこの橋も骨身にしみる。とろとろ走っているととなりを原付バイクがぶいー、と通り過ぎていった。うーん。だんだん空しくなってきたぞ。もっとも、一人でしまなみを往復しようなんてのが無茶な行為なんだからこれぐらいの苦労は覚悟の上といえばそうなのだが。でもやっぱり辛い。

 大島に入ると後は2つの坂を越えるだけだ(実際は地獄の来島大橋が待っているのだが)。この辺まで来るとかいた汗が乾燥し、体中が塩を噴いたようになってしまっている。ざらざら状態だ。もちろん体は前にも増して塩分を要求していて、塩辛いものが無性に食べたくなる。ちょこちょこ休みを入れながら二つの坂道を制し、下田水のおみやげ屋さんに到着したときには、17時30分。かろうじてお店は開いていたのでここでおみやげを購入。ふりかけとか、つい塩辛いものを選んでしまった。うう、やはりあそこでちゃんとスポーツドリンクを選んでおくべきだった。

 後は最後の地獄、来島大橋を渡ってしまうだけだ。しかし、帰りの来島大橋はやはり地獄。アプローチが長くて苦しいのは仕方ないとして、今治方面に向かうときは全体に上り調子になるのだ。さすがに風は吹いていなかったので自転車を押して歩くことは無かったが、残りの体力はわずか。疲れた体にムチ打ってもなかなか前に進んでくれない。たった4kmの橋なのだが、10kmにも20kmにも感じてしまった。

足腰立たなくなったところでついに到着
●ついに完走●

 最終的に出発時に撮影した地点まで到着したのは18時8分。少し遅れたが、最初の予定通りの時刻だ。出発が1時間半遅れたことを考えると、かなり早く到着することができた。疲れ度合いも予想の範囲といえばそうなのかもしれないが、すごく疲れているのは間違いない。自転車をたたんで車に突っ込み、運転席に倒れこんだ。しばらくは足を伸ばしたまま、身動きできなかった。

 今回は一人できているので帰りも一人。車を走らせると、アクセルを軽く踏み込むだけでするすると走り出す。あたりまえの事なのだが、自転車でへろへろになりながら、ペダルを踏んでも踏んでも少しずつしか進まない状態で走ってきたことを考えると、シートに座ってちょこっと操作するだけでスイスイ進む車はあまりにも偉大だった。車の偉大さを、改めて感じてしまった。

 それにしても塩分を十分に取らなかったのは今回の誤算。結局家に帰るまでまともに塩分は取れなかった。晩御飯には塩味たっぷりの漬物を味わったのは言うまでも無い。とにかく一人で走ることで、思ったよりも早いペースでかなりの距離を走ることができることもわかった。そして塩分の準備も大切だし、なによりも自転車の鍵を忘れてはならないことをつくづく実感したのであった(^_^;)。


疲れきった体を夕日が照らす
体中から噴出す塩が潮風を受ける

誰のためにここにいる
何を求めてここを走る

誰もこたえない
何処にもこたえは、無い

背中には、走りきった島並
そこに置いてきた
なにもかも、そこに置いてきた

絞りきった疲れは、黒いアスファルトが吸い込んだ
孤独な走りは、巨大な橋に吸い込まれた

静かに、身体をシートに沈めた

何も残らない
ただ、潮風だけが知っている

渡りきったしまなみを夕焼けが包む



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