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☆玄の館 別館 しまなみ海道☆
出発前に撮影した朝焼けに煙る来島大橋。クリックすると壁紙サイズで見られます
★しまなみ自転車海道往復記'03−その1−★

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 2003年ゴールデンウィーク。この年の連休は天気も良く、気温もそこそこで自転車ツーリングをするには最適であった。これまでに何度も計画しながら実行に移せなかったツーリング。それは、しまなみ海道を1日で往復してしまうという、素人が実行するには無謀とも思えるものだった。そして、スタートするやいなや、とんでもないことが発覚する…。

●朝焼けの来島大橋で私を待ち構えていたワナ●

 これまでに3度しまなみ海道を自転車で走ってきたが、いずれも7つある全部の橋を一度に渡ることはできなかった。全長で80kmはあると思われるサイクリングロードを1日で往復することはほぼ不可能と思われていたため、チャレンジしてこなかったのだ。実際、これまでに1日かけて走行できた距離はせいぜい80km程度。そのことを考えると片道のみ走行し、一泊して帰ってくるというような行程を組まない限り無理があった。ただ、その場合2日に渡ってのトライとなる。家族のある私にはこれもまた無理な行程でもあった。

 しかし、世の中にはがんばる人もいるわけで、Webで探してみると、1日でしまなみ海道を往復したという人も結構いることがわかった。ほとんどの場合は一人でチャレンジしている。自分の場合はこれまで仲間内2〜4人でツーリングをしてきたが、やはり走行距離が160kmにもなると生半可なやる気だけでは到底無理。仲間内でも往復するだけの気力を持っている(物好きな)人間はほぼ皆無。となると、一人でチャレンジするしかない。

これを撮影した時は余裕だったのだが  時はゴールデンウィーク。季節的にもチャレンジするには最適なのだが、この時期は仲間内はほとんど帰省したり旅行に行ったりでどっちみち行けるのは一人になる。また、一人の方がペース配分をつかみやすく、マイペースで距離を伸ばせるので長距離を走るには都合がいい。更に平日が休みになる日は子供の世話を(ほとんど)しなくていい。ということでたった一人でのしまなみ海道全橋往復チャレンジ。その決行の日を4月28日に決めた。

 片道80kmを往復するとなるとかなり時間がかかることは明白だったので、いつもの出発点、サンライズ糸山を6時に出発できるように朝は4時起き。6時にサンライズ糸山を出発すれば、昼までに6時間。おそらくこれぐらいあれば片道走破はなんとかできるのではないかと思っていた。帰りに疲れて遅くなったとしても、7時ぐらいまでにはサンライズ糸山に帰ってこられるだろう。とにかく、朝早く出発できることがミソだ。

 前日に子供の相手をしてかなり運動していたこともあり、あまり準備ができないまま寝てしまっていたので未明から自転車を車に積み込むなど準備に追われた。結局出発したのは5時。新居浜からサンライズ糸山までは1時間半を要した。6時に出発予定だったのだが、まぁ30分ぐらいの遅れならそれほどでもないだろう、ということで先に展望台に直行。朝日に煙る来島海峡を何枚か撮影した後、サンライズ糸山へ。自転車を車から降ろして組み立てて、さぁ出発、というところで悲劇が発覚した。

 普段自転車には盗難防止のワイヤー錠をかけている。ふだんなら自転車に乗るときは玄関においてある鍵をズボンのポケットに入れるのだが、今回はとにかく自転車をたたんで車に入れるのに集中していたため、自転車の鍵を取った覚えが無い。組みあがった自転車には無情にもワイヤー錠がしっかりかかったままである。自転車を前にしてしばらく呆然と立ちすくんでしまった。

 鍵は持っていないのだが、自転車用の工具として折りたたみ式のペンチを持っていた。100円均一で購入した安物だが、とりあえずワイヤーを切るぐらいのことはできそうな気がした。時刻はもう7時になろうとしている。このまま帰るのも癪なので、とりあえずその場でワイヤー錠の切断を始めた。なんとか切れそうな感じだったので、ペンチにぐっと力を込めた。

バキリ

 いやな音がして手を見ると、そこには無残に折れたペンチが転がっていた。ワイヤーは外のビニールがムけた程度で、ほとんど切れていない。しょせん100円均一の安物ペンチは安物でしかなかった。他にワイヤーを切るような道具を持っているわけではない。こうなるともうあきらめて帰るしかないのか?。とにかくこのままじっとしていてもしょうがない。自転車を再び車に乗せ、とりあえず国道を走った。


コンビニの道路をはさんだ反対側にあった看板!竿忠様さま!
●その看板が運命を変える●

 コンビニを見つけたのでまずそこに車を止める。時刻は7時を少し回ったぐらい。この時間に開いている店といえばコンビニぐらいだ。一応店内を探したが、さすがにペンチかそれに代わるような工具をおいているわけではない。駐車場で車に乗り込んで大きくため息をついた。

 ふと前を見ると、大手DIYの店がある。が、さすがに7時では開いていない。店舗にもよるが、この店は早ければ8時ぐらいにはOPENする。しかし、8時から鍵を壊してそれから出発したのでは予定より2時間以上遅れてしまう。そうなるとさすがに全行程の往復は無理になってしまう。更に開店時間が遅ければ致命傷だ。あきらめるか。そう思ってもう一度前を見たときに、その隣にある店の看板に釘付けになった。

 「竿忠」と書かれた大きな看板、下に目をやると、明かりのついた店内に竿やウキがカラフルに並んでいるのが見えた。「釣具屋だ!」ここなら工具類を何か売っている可能性がある。なにより店が開いている。思わぬ店が役に立ちそうなことを知った私はあわててそっちに車を突っ込んだ。

 店に入ると、やさしそうな感じのおかみさんが出てきた。「ペンチあります?」「ペンチねぇ、これなら今特価でいいのがあるけど…」と、出してきてくれたのは釣り針を曲げるのに使えそうな先細のラジオペンチ。確かに安いんだけどこれではワイヤーを切ることはできそうにない。そこで、事情を話して相談すると、「あ、ここで使うのなら大きいの貸してあげるよ」と、快い返事。お言葉に甘えてペンチを借りることになった。

 実際に少し大きめのペンチでワイヤーを切ってみるのだが、やはり一筋縄ではいかない。「そりゃあ盗られたらいかんけんねぇ、がいよう作っとらいね」とおばちゃん。しばらく悪戦苦闘したあと、なんとか切断することができた。結局そのお店では何も買わなかったのだが、おばちゃんの息子も自転車でしょっちゅうあちこちに行っているらしく、事情はよくわかっているらしい。何度もお礼を言ってお店を後にし、一路サンライズ糸山へ向かった。

そして出発。再びここに帰ってこれるのは何時か?  時刻は7時26分。休日ならこの時間ともなれば駐車場も混んでくるのだろうけど、今日は平日。駐車場はガラガラ。再び自転車を組み立て、荷物をまとめて忘れ物の無いことを確認。予定より1時間半も遅れている。平日とはいえ、GWなので他にも自転車に乗ってツーリングに行こうとしている人がぽつりぽつり。ほとんどの人がこの位置から写真を撮っている。まずはここが出発点であり、ゴールでもあるのだ。とにかく行ける所まで行ってみよう。後は自分の体力と精神力だけが頼りだ。


まだかろうじて朝もやの残る来島海峡に向かって、ペダルに力を込めた。


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