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TNKで撮影したバラ星雲
TNKな画像処理2

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 この窓際天文台、2020年時点での基本的な撮影方法は「TNK=て・ぬ・き」だ。これは望遠鏡の直焦点撮影を、一眼レフデジカメの超高感度を活用することで、赤道儀の精度だけにまかせてノータッチで短時間撮影するというものだ。望遠鏡・カメラ・赤道儀があれば比較的簡単に撮影できるので、TNKという名前にしてある。要はラッキーイメージングなのだが、少なくとも普通の人が見て「おおっ!」と思える写真ぐらいまでは撮影できる。ポイントは撮影方法と画像処理だ。ここでは自分なりの画像処理のワークフローとポイントを並べてみたので、参考に、もしくはあざ笑ってみて欲しい。
2020年1月29日

使うソフトは格安「Paint Shop Pro



ずいぶんと間が空いてしまった(…実質5年空いてるよ。どんだけ放置してんねん…)が、実はこの間に実施している画像処理の手順はほとんど変わっていない。なんとも進歩が無いが、とりあえず格安で天体画像処理ができる自分なりの手順を紹介しておこう。

RAW現像でノイズ除去とホワイトバランスを合わせた後、YIMGで画像をスタックしたら、後は強調処理を進めていく。このときに使うのがPaintShopProだ。2020年現在の最新バージョンは2020(そのまんまやんけ)だが、だいたい毎年バージョンアップされていて、その度にバージョンアップ購入していたら何のために安いソフトを使っているのか分からなくなるので、私の場合は3〜4年に一度バージョンアップをしている。

ソフトはパッケージ版でだいたい12千円前後(今見たら8,680円+消費税。amazonで見たら半額セールとかやってる…)なのだが、これは通常購入版だ。アップグレード版だとだいたい7千円以下で手に入る。前バージョンを持っていなくても、他の画像処理ソフトを使っていれば「乗り換え版」という名目でこのアップグレード版を購入できる。最新の状況は分かっていないが、インストール時に特定のソフトのディスクを要求されたりはしないので、普通はこの7千円以下の乗り換え版を購入するのがお得だ。それこそ年賀状ソフトに付いてきた画像処理ソフトも乗り換えの対象だったりするので、たいていの方はライセンス上乗り換え版で十分なはずだ。(後は各自の責任のもとにお願いします…)

ソフトの内容は言ってしまえばPhotoShopの劣化版みたい(失礼)な感じだが、実際には操作方法が独特だったり、機能的に便利なモノが無かったりで必ずしも同じようには使えないと思っておいた方が良い。また、総じて「重い」のと、独特の操作体系に慣れるまでは苦労すると思う。操作体系に慣れが必要なのはPhotoShopも同じだけどね。

後は、PhotoShopと違って、とにかくチュートリアルや便利な操作方法、応用教科書が無い。捜せばごくわずか書籍があったりするが、とにかく特定の操作をしたいときに参照先が少ないというのは使っていて不便なことも多い。でも、私は安いのでこれでなんとかしているというのが正直なところだ。(操作方法などは、もしかしたらPhotoShopと同じようにできることも多いのかも知れないが、そもそもPhotoShopの使い方もよく分かっていないので、そこは省略しておく…)

本家PhotoShopは基本サブスクリプションになってしまったので、毎月千円〜2千円ほどは支払いが必要…となる。自分に必要な機能がこのPaintShopProにあれば、3ヶ月〜半年で元が取れてしまうことになる。

なお、天体写真の画像処理ということに特化すると、ステライメージがあって、これもだいたい3万円するので安くは無いのだが、天体写真に特化しているだけあって便利な機能も結構多い。コストパフォーマンスは決して悪くは無い、というか効果を考えたらかなりコスパ高いと思うのだが、私は使ったことが無いのでここでは紹介にとどめておく。ただ、天体写真処理の「こんな風にするんだよ」というのはだいたいこのステライメージとPhotoShopを使うことを前提にして説明されていたりして、「どんだけセレブなんだよ」と思うこともしばしば…みぞかさんとギガントを揃えておいてそれを言うか、と言うのはこの際置いとこう(ヲイ

閑話休題。

とにかく安くて高機能な?PaintShopProを私は使っているので、これを使った強調処理をちょっと紹介しておこう。なお、あくまでこれは私の使い方であって、「もっと便利で簡単な方法があるよ!」という方はゼヒ拙ブログまでコメントで教えていただきたい。正直、どんどん機能が増えていくPaintoShopProの心髄まで全然たどり着けていないのだ。

まず、インストールしたらPaintShopPro、以下PSPとする(今は無きPlayStationPortableとは違うので注意な)のアイコンをデスクトップに置く。画像処理したい絵(YIMGで処理した後ならTIFF保存してあるはず)をドラッグ&ドラップでこのアイコンに落とす。ソフトを事前に立ち上げないのは、普通に立ち上げるとビューワーが立ち上がってしまい、そこから「画像処理」を選ばなければならなくなるからだ。(実はこの設定は変更できるらしい)この際に処理する画像が簡単にセレクトできればいいが、フォルダを設定しておかなければ全然関係無い画像を開くことになってしまうので、結構面倒だ。ドラッグ&ドロップをすればその画像を編集するモードでソフトが立ち上がるので面倒な手順が必要なくなる。

画像が開いたら、南北を確認した上でローテーションで上下を合わせる。縦位置での編集をしてもいいが、普通は画面が横長なので、横位置での編集を実施する。


YIMGでスタックしてあれば、通常画像の周辺部に重ならなかった余分な黒縁などが残っているはずなので、まずはこれをカットするためにトリミングアイコンをセレクトし、トリミングを実施しておく。

こうして形を整えたら、強調処理に入る。私の場合は通常「レベル」でデータの無い暗い側をごっそり切り取ってしまう。この操作は後からやろうとすると強調処理でデータのヒストグラムが変わってしまい、どの辺が最適なのか分からなくなることがあるので最初に実施する。
この後の強調処理や周辺減光などの処理も同じなのだが、ここから先は基本「レイヤー」−「新しい調整レイヤー」−で調整レイヤーを追加しながら行う。場合によってはこのレイヤーの順番を入れ替えたりして調整する。

今回は「レイヤー」−「新しい調整レイヤー」−「レベル…」でレベル調整レイヤーを追加する。レイヤーで追加するのは、失敗したりやり直したりする際に、何度でも調整できることや、後で出てくる「透過度」で調整できるからだ。とにかくレイヤーで調整できるのが便利だ。ただ、レイヤーがかなり多くなるととたんにPSPが重くなってしまうので、やたらとレイヤーを増やすのは気をつけた方がいい。


ここでのレベル調整は、ヒストグラムの暗い側を、ヒストグラムが立ち上がり始めているところの手前ぐらいまで持って行く。中間部の設定も一緒に動いてくれるので暗い側の端部を動かすだけで良い。完全に立ち上がりまで持って行ってしまうとデータを削ってしまいそうなので、ちょい、状況によってはかなり手前まででとどめておく。なお、今回のサンプルは元画像が良くてあまり明るく無いのでカットする部分が少なめだ。場合によっては、半分ぐらいまで切り詰めることもある。

レベル補正で黒い側が締まったので、今度は淡い部分を持ち上げてくる必要がある。淡い部分を持ち上げつつ、ハイライト部分は飛ばないように注意が必要だが、トーンカーブ補正だとそうした処理がある程度できるようになる。軽くコントラストを上げたり彩度を上げるぐらいだったらPSPをわざわざ立ち上げなくてもIrfanViewで済ませてしまえるが、この淡い部分を持ち上げて強調する、というのは少なくともPSPとかのトーンカーブを使えるソフトが必要になる。

やり方や順番は色々あるとは思うが、私の場合は、まずレベル補正で余分なエリアをカットした上で、まずはトーンカーブで暗い部分をかなり持ち上げて、それから強調処理をしていく形を取っている。なので、レベル補正の次に入れるトーンカーブは暗い部分を持ち上げる処理を行う。ここでもレイヤーを使うので、「レイヤー」−「新しい調整レイヤー」−「カーブ」と選んでいき、ダイヤログを出す。

ここで普段「こんなもんかな」と思っているのは、ヒストグラムの立ち上がり部分にトーンカーブを持って行くということだ。必ずしもそうする必要は無いが、持ち上げたい淡い部分がこの辺にあることが多く、このヒストグラムの立ち上がり部分に注目して揃えると、だいたい強調はできる所になる。そのまま立ち上げると淡い部分のコントラストが不足するので、下の方にポイントを一つ打っておく。また、明るい部分も明るくなりすぎることがあるので、その辺がリニアになるように調整ポイントを打っておく。

淡い部分が持ち上がってきたら、(この時点で見えなければ、だいたいデータにはほとんど無いことになる…)それを強調するために次のレイヤーを付ける。これまたトーンカーブだ。
先ほどのレイヤーで淡い部分を持ち上げたので、たいていはちょっと明るすぎる状態になっているので、少し暗い側にシフトさせながらコントラストを上げる(S字に近いような)形に整えていく。このとき、普通にコントラストを上げると明るい部分が飛んでしまうし暗い部分はつぶれてしまうので、その辺が繋がるように2〜3点のポイントを追加しながら微調整をしていく。普通1発では決まらないので、同様の処理を明るさや強調しすぎによるノイズなんかを見ながら複数回繰り返す。私の場合はだいたい2〜3枚のレイヤーを入れて調整している場合が多い。レベル補正と暗い部分を持ち上げるレイヤーを合わせると5枚前後だ。

このトーンカーブだが、実際にやってみれば分かるのだが、ヒストグラムを見ながらコントラストの立ち上がり部分を左右に振るような操作をポイントを内ながら行うことになる。なので、上下のツブれを防止するポイントはそのままで、中央部の3点ぐらいを保って左右に動かせる機能があればすごく便利なのだが、残念ながらそうした機能を見つけられていない。また、同じようなトーンカーブになることが多いので、適当なところでトーンカーブを保存しておいて、それを呼び出して使うこともできる。最初はそうした呼び出しも使っていたのだが、結局は微調整が必要でポイントの打ち直しになるので、最近は結局最初からポイントを打ちまくって調整している。

ある程度強調処理をすると、たいてい周辺減光が気になってくる。本来なら周辺減光はフラットを撮ってそれで処理するのが正解なのだが、さほどひどくなければ簡易的にPSPの機能(グラデーション)で処理してもさほど違和感は無い。いや私が気にしないだけだ(^^;。簡単なのでフラットを省略して使いまくってるだけだったりする…。

右上のグラデーションパレットをクリックし、白黒の中央集光のグラデーションを呼び出し、それの白い部分が周辺減光以外になるようにエリアを調整する。これは光学系にもよるが、複数種類作って置いて場合によって使い分けた方が良さそうだ。それを保存しておいて、元の編集画面に戻る。ただ、この辺のパレット(「マテリアル」と書いてある右上の部分)の使い方は私もよく分かっていない。てきとーにクリックしていたらなんとかなった、というのが正直な所だ(^^;;

周辺減光を何で調整するかにもよるが、私の場合は手っ取り早い「レベル補正」で行っている。要は「中央付近の明るい部分だけを暗くする」という処理をやるわけだ。全体的にまだ少し明るい状態にしておいて、レベル補正で今度は中央部分をぐぐっと右に寄せて全体を暗くする。まぁ、何事もやり過ぎには注意だ。

その上で、「Paint」アイコンでグラデーションによる塗りつぶしを実行すると、グラデーションの白い部分だけが「レベル補正で塗りつぶし」されるわけだ。その部分だけが暗くなり、周辺部は明るいまま残ることになる。

やり過ぎたな、と思ったらレベル補正を調整し直してもいいのだが、これは少し時間がかかる上に、調整度合いを目視しにくいという弱点があるので、私は「透明度」のレバーをいじって効き具合を調整している。この周辺減光に限らず、調整レイヤーの場合は「透明度」で効き具合を調整するとわかりやすい。PhotoShopの場合だと、具体的な効果をいじった際のプレビューがしっかり分かるので、透明度で調整したりはしないのかもしれないが、PSPの場合はプレビューが一部のみで、しかも反映にすごく時間がかかるので扱いにくい。この透明度の調整だとプレビューで素早く分かるので、まだ使いやすいのだ。ただ、根本的に調整が異なる(不足したりした)場合は元の調整(トーンカーブやレベル)を調整した方がいいけどね。

こうやってそこそこ淡い部分のコントラストが整ったら、微調整して保存する。ここから先はだいたいプリントするかブログに載せるぐらいなので、私の場合はjpegで保存している。ただ、モザイクやHDR処理などでレイヤー調整を後からいじる可能性がある場合は、PSPの形式でレイヤーを含めて保存しておくこともある。まあ、後からいじる事はほとんど無いのだが…。

このほかにも、強調処理をしている途中で色バランスがおかしくなってしまった場合は、「ホワイトバランス」のレイヤーで調整をする。更に必要に応じて「彩度」の調整もすることもあるが、たいていはIrfanviewで行うのでここで実施するのはカラーバランスの確認の時ぐらいだ。(実は、彩度のレイヤーはむちゃくちゃ重いので使いたくない…)

で、最近はコントラスト調整以外に、もう少し画像処理をすることもある。シャープネスとノイズ除去だ。どっちを先にやるのが良いのかは分かっていないが、今のところシャープネスを先にやっている。このシャープネスとノイズ処理はレイヤーでは処理できないので、画像を直接いじる事になる。

まずシャープネスだが、普通にシャープネスをかけると全体的にちょっとドギツクなってしまうので、私はPSPの「ファインシャープネス?」を使っている。これだと星が全体的にしっかりしてくるので心地よいシャープネスだと思っている。半径を星野なら1,直焦点なら2ぐらいにして、強調を50%前後かける。 なお、シャープネスをかけるのは一番下、元画像のレイヤーだ。その他の調整レイヤーにかけようとしてもエラーになるので注意が必要だ。



ノイズ処理は、過去はほとんど無かったのだが、今のPSPには「調整」−「デジタルノイズ除去」がある。これは対象によって効果的な場合と全然な場合があるので注意が必要だが、ノイズが気になる場合はかけておいて損は無いかと。ダイアログが開いてかかり具合をしっかり確認しながら調整できるので、必要に応じて、というところだ。なお、ノイズ処理は画像の強調処理が終わった後に掛けることになるので、「レイヤーの統合」処理を行って全部の強調処理を反映させた画像にかけることになる。強調レイヤーの無い元画像だけに掛けた場合はどうなるか…実はまだやったことが無い…。

で、私の場合はここまででPSPの処理は終わり。jpegで保存してブログとかに持って行く。が、実際にはブログにアップする前にもう一処理しておく。

ここから先はIrfanViewで処理を行っている。理由は簡単。軽いからだ。特に彩度の処理は強調処理をPSPでしようとすると、やったらめったら重くなることがある。最初は原因が分からなくて困ったが、彩度のレイヤーを外したらとたんに軽くなったりした。こんな風にPSPは特定のレイヤーで極端に重くなったりするので注意が必要だ。

IrfanViewでjpegを開いて、コントラスト、彩度を少し上げてブログ用に見栄えを整える。強調処理がひどい場合は触らないこともあるけどね。その上でシャープネスをかけてから、リサンプルでブログサイズに落としてアップする。シャープをかけるのはリサンプル時に眠い画像になりがちだからだ。

ということで、これが自分が実施している画像処理。最近はこれに加えてHDR処理やフラット処理をやり始めている。この辺はまた機会を見て自分なりのやり方を公開していきたい。本日は、ここまで!


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