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寒風山の天の川をまる子とリチャードで狙う
今日も曇天11

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 小学生の頃から慣れ親しんできた天体観測だが、その頃から、「これは一生の趣味になるだろうな」という気はしていた。紆余曲折を経て、未だにあれやこれやと思い悩む天体写真、その顛末を記録してみました。「曇天」なのは、晴れればこのページを書いている暇が無い訳で、曇って星が見えない日に書いているからなんです。トラブルも多数…

観望会で便利に使いたい望遠鏡を手に入れるハズだったのだが
観望会での大型反射望遠鏡は、よく見えるのだけど使いにくい。それならばと、よく見える屈折望遠鏡を導入するはずだったのだ。屈折のハズだったんだけどなぁ。

2018年1月10日 リッチなクレチアン 笠井 GS-200RC


例に寄って時はさかのぼって2016年の夏。実はちょっと高性能な屈折望遠鏡が欲しくなっていた
当時は地元愛媛で、いろんな天体観望会にボランティアで出席することが多く、観望会で使う望遠鏡に関してちょっと不満が出ていたのだ。

普段使っている望遠鏡は R200SS。ちょっとがんばるときはビグレプ1号の口径25cm反射だ。星雲星団を見せるときにはこうした大口径反射は実力発揮をするのだが、いかんせんニュートン反射望遠鏡。いろんな人に見せるときに、その覗き口が上の方に来てしまうと、特に背の低い小学生ぐらいの人には苦労させてしまうか、もしくは全然見えないことがある。

筒を回して接眼部を下向きにすればなんとかなるが、そんな調整をしている間に肝心の対象から外れてしまうわ、ヘタしたら観望会が終わってしまいそうなこともあって、なんとかしたいとは思ってた。

脚立を使うという手もあるし、実際脚立が用意できる場合は借りてたし、自作の脚立でなんとかしたこともあったのだが、やはり観望会向きでは無い筒であることは確かだ。観望会専用の筒というのももったいない気がするので、せっかくなら撮影も観望会も使える万能な筒が一つ欲しくなってしまっていた。

いや、屈折の大きいのなら、実はドナルド君(SE120+ポルタハッピーセット)があるのだが、観望会とかで色んな筒と使い比べてしまうと、やはりアクロマート12cmという限界が見えてきた。特に明るい木星なんかを見比べてしまうと、ちょっとなぁ、という見劣りがひどいのだ。月を普通に見るだけなら全然問題無いのだが、観望会で並んでいるフローライトなんかと見比べた日には、がっくり来てしまう。値段が値段だけに仕方が無いのだが、コントラストがまるで違うのだ。

とにかく、観望会でも自慢できる(そこかよ)筒が欲しい!ということで物色を始めた。口径は10cm以上が欲しい。プロミナーを使えば、9cmフローライトができてしまうからだが、せっかくならそれ以上の口径が欲しくなると言うものだ。プロミナーで満足しない理由は、以前これで観望会にチャレンジした際、やはり淡い星団とかの見え味がいまひとつで、大口径のシュミカセとかと比較して見劣りしたからだ。惑星とかを見てやればまた違ったのかも知れないが…。で、色々考えた結果、KASAIのBRANCA130EDT(II型)にほぼ決定した。口径13cm、EDトリプレットで色消しも結構良い。そしてII型になって結構安くなった(とは言え税込みで27万円近くする…)色々見比べて、撮影にも使えて手頃なのはこの辺だ、ええい買ってしまえ〜と、カートに入れてポチする寸前まで行った。

が、何故かここで天の声がする。

「II型になってるけど本当に撮影に使える画質なの?」


いや実際、過去にKASAIのEDは11cmの2枚玉仕様のものを借りて撮影したことがあった。この時の感想は「眼視にはいいけど、撮影には赤ハロがひどくて使えねぇ」というものだった。赤、というか紫ハロかな。3枚玉のEDTIIなら、それも無いだろうという勝手な思い込みがあったのだ。他の人のレビューを見る限りは、実際使えそうだった。

が、天の声である。いや実際、本当にポチする寸前に思いとどまったのは我ながら不思議だった。で、一応ググってみた。すると、とんでもないことが判明する。某ブログでI型とII型とのスペック比較が行われていたのだ。過去の130EDTと、今回のII型の130EDTIIとでは、球面収差の計算曲線がまるで違うのである。過去の曲線はKASAIのホームページから消えているのでそのままでは分からないのだが、とにかく色ずれが相当に大きくなっている。II型になって、画質性能が悪くなっているのだ。がーん。

直接撮影して比べたわけでは無いので分からないが、そのままでは撮影に使えないかも知れない可能性が出てきた。そもそも税込み27万円というのはかなり負担ではある。更にファインダーや天頂プリズムを考えると結構厳しい。これはちょっと待て…ということになった。

しかし、ポチツとするために振り上げた拳はこのままでは収まらない(いや、収めてもいいと思うぞ)。観望会のための望遠鏡を買うのだ!そうだ!次の候補だったこれだ!

…はい、例によってずいぶん長い前振りですまん。ようやく出番。KASAIのGS-200RCだ。カセグレン式の望遠鏡であれば、一般に接眼部は下に来る。しかも反射系なら色収差はあまり気にならない。GS-200RCなら撮影にも十分使える(というか、撮影用の筒だよな、これ)。しかも税込みで16万円ちょい。ファインダーやレデューサーなんかを色々買い足しても、なんとか20万円ぐらいで収まる。口径も20cm。相当でっかい遮蔽を考慮しても、光量で15cm以上は確保できる計算になる。

重量も6.4kgと、130EDTIIよりも2kg近く軽くなる。当時はカーボン筒ではない200RCもあって、値段も安かったのだが、観望会や移動を考えると少しでも軽い方が良い(重量差1.5kg)。なんと言っても130EDTIIを考えていたので、カーボン筒にしても十分元が取れる価格だった。コストパフォーマンス抜群じゃ無いか!。

と言うことで、こちらはあっさりポチしてしまった。口径20cmF8の望遠鏡。焦点距離が1,624mmあるので低倍率で星雲星団を見るのは少し苦手だが、それでも20cmの口径があるので月や惑星を見る分には十分な性能を発揮できる。少々ずんぐりむっくりなので運びにくいという点はあるが、専用のバッグを準備したので、車で運ぶ分にはさほど苦労はしなかった。

…つづく…


2018年2月11日 使えるまでのセッティング 笠井 GS-200RC


段ボールにキッチリ収められていた筒
ポチリヌス菌に感染して手に入れてしまったリッチークレチアン。段ボールにきっちり収められていたので無用な捜索を行うことになってしまったりした
さて、ポチしてしまった夏休みの宿題、GS200RC。購入はカサイから直接ではなく、カードが使える協栄産業から。こちらの方が色々サポートとかもしてもらえそうなので便利だろうと考えてのことだが、実際に望遠鏡でサポートを受けたことはほとんど無いのでまぁ気休めといえばそうかな。

とにかく1週間ほどで到着。大きな段ボールをいそいそと開けてみた。ただ、結構キツキツに梱包されている。なかなか筒が出てこないので、ひっくり返して落とし込んで取り出し。真っ黒い鏡筒を見て一人でにやにやしてみていた…

が、一緒に注文したx0.8のレデューサーも含めて撮影してたのだが、なんか足りない気がする。そう言えば、この筒には接眼部に取り付ける延長筒が3個付属しているはずだが、それが見当たらない。おや?このままではピントが合わないかも知れない、というか確実に合わない。おかしい。さすがに重要なパーツである延長筒を入れ忘れるのも考えにくい。

とりあえず筒を一通り眺めて得心した後、改めて箱をひっくり返して発泡スチロールを取り出してみると、果たしてそこから延長筒がコロコロと出てきた。なんで反対側に入っているねーん、とも思ったのだが、最初に段ボールを出すときに出てこなかったので、ひっくり返して無理矢理出した記憶がある。どっちにしても人騒がせな収納方法である。

さて、このGS200RC。購入できたのは筒だけで、眼視にせよ撮影にせよ付属品が必要になる。天頂プリズム、ファインダー(Vixen7x50)はAmazonで注文。更に撮影用のレデューサーを導入した。このリッチークレチアン用のレデューサーとしてはx0.75倍の専用レデューサーフラットナーがあるのだが、単純にそれを導入してもいいのだけど、それだけでは面白くない。

そもそもGS200RCはF8なので焦点距離は1,600mm。x0.75倍のレデューサーだと1,200mmとなり、ビグレプ1号+パラコアレデューサーの1,150mmとさほど変わらなくなってしまう。実際には赤道儀の負担にもよるが、撮影するならビグレプ1号で済ませた方が話が早い。それなら、せっかくのF8を利用してちょっとだけ焦点距離を長くできるx0.8倍のED屈折用レデューサーを使ってみることにした。

フラットナー機能の有無がちょっと気になるが、某ブログ仲間からはED屈折用のレデューサーもRCとの相性は悪くないと言われてたので、せっかくなので試してみることにした。焦点距離は1,280mmになる。星像がどうなるか少し不安ではあるが、どっちにしても2インチ差し込み式なので、取り付け自体は非常に簡単。このレデューサーで一つ便利だったのが、天頂プリズムで眼視するときも、このx0.8レデューサーを付けて写真撮影をするときも、25mmの延長筒ひとつだけでピントが来ること。延長筒の付け外しが不要なのだ。延長筒は接眼部の根元に取り付ける形なので、付け外し作業は結構面倒なのだ。

ファインダーの取り付けにも一工夫必要だった
ファインダーの台座を付けてみたが、どうしてもセンターが合わない。どうも平行性があやしいので、こんな時に便利に使えるペットボトル。切れ端を台座の部分に挟み込んで調整してみた。これで普通に使えるようになった。
次に取り付けたのはファインダー。そもそもGS200RCはそれなりに重いので軽いファインダーが理想的なのだろうが、ここはひとつ、あこがれの7x50ファインダーを用意した。まぁ、それはいいのだが、改めてファインダーを調整しようとすると、どうしてもセンター位置が合わない。筒が重いのでファインダーを合わせるのにもしっかりと赤道儀に乗せなければならず、ずいぶんと苦労した。

何故合わないのかしばらく悩んだが、どうやらファインダーの台座の取り付け部分の精度が今ひとつで、筒と平行に取り付けられないらしい。筒側がいーかげんなのか、ファインダー台座がいーかげんなのかは不明だが、まぁ、こんないーかげんなのは天文をやってるとよくある話だ(…ホントか?)。

どうしたものかとあれこれ考えたが、台座の下にファインダーを少し持ち上げられるだけのスペーサーを挟めることにした。ペットボトルの切れ端を挟み込んで調整してある。強度はとにかく、手軽なのは確かなので、とりあえずこれでなんとかなっている。
一緒に星景写真に収まると結構絵になる
観望会では非常に便利に使える。一緒に星景写真に収まると結構絵になったりする。ちなみにここは香川県の天体望遠鏡博物館。

さて、使ってみると、20cmは良くも悪くも20cmだ。そのハンドリングはそれなりに重くて大変だが、25cmのビグレプ1号みたいなことは無い。ただ、上下に付いているアリガタレールが結構とがっているので、持ち上げたときにその突起が腕に当たると結構痛い。このアリガタレールそのものは取っ手にもなるので便利なのだが、このとがり具合は困るうぅ。

とにかく、実際に観望会で使ってみると、そのハンドリングが便利なのと、なんと言ってもカセグレンならではで、望遠鏡の下から覗くことができるので、かなり便利に使うことができた。さらに思っていたよりもコントラストが高く、惑星とかを見ても想像してたよりもしっかり見える。口径も遮蔽部が大きいとは言え、20cmあるのでそれなりに暗いものもしっかり見える。いいぞぉ。

撮影してみても、レデューサーを使うことでF6.4になり、なんとかTNKで撮影できるレベルの運用ができる。焦点距離的にはギリギリだと思うが、星像も悪くないので、春の銀河など、拡大を希望したいときには便利に使えるはず…だと思っている。実はまだそれほど活躍できていない。全然できていない。導入のタイミング的に、銀河を撮影するならビグレプ1号で事足りてしまっているということもある。まぁ、観望会御用達望遠鏡だ。

…忘れてた。コイツの名前を考えていなかった。別にムリに名付ける必要は無いのだが、せっかくなのでコード名ぐらいはつけてやろうかと思ったら、ネットでアドバイスをいただいた。リッチークレチアン鏡なんで、リチャード君ということだ。おお、いいぢゃないか。リチャード君、今後ともよろしく(^^;



2018年3月12日 究極のTNK赤道儀? iOptron CEM25EC赤道儀


アルミケース付き。早速組み立ててみた
究極のTNK赤道儀となるか?今までの赤道儀の中では最高値、しかも新品で導入してしまったCEM25EC。アルミケース、三脚付きでなかなかお得な感じがしなくはないのだが、かなりの問題も…
時は…相変わらず1年ほど前の話だけど、2016年秋、夏にリチャード君を買ったばかりだというのにもう次の機材が欲しくて欲しくてどうしよう状態になっていた。欲しかったのは新しい赤道儀だ。というのも、EM姫ことEM200は立派に働いてくれているのだけど、リチャード君のレデューサー込みでもF6.4、1,280mmという暗くて長い焦点距離の前にはちょっと厳しいということが判明していた。

更に鳴り物入りで導入したパトラー嬢ことSXPオートガイドも今ひとつうまく行かず、そのままの性能ではPECを使ってもヘタしたらGPDよりも悪い性能しか出ないとか、TNKをこれ以上進めるにはなんだかなぁ、という感じになってきてしまっていたのだ。

後はチャレンジすることと言えば、もっとしっかりしたオートガイドを導入してしまうか、もっと精度の高いピリオディックモーションの限りなく少ない赤道儀(いや、EM200より良いものなんてそうそう無いぞ…)を導入するか、究極のエンコーダー付きの高価な赤道儀を買ってしまうか、そんなに選択肢は無い。後はあきらめるしか無いのだ(カメラの性能を上げるという手はある…)

そんな中、iOptronが絶妙な赤道儀を発売したらしい。どうやらこの時買えるのは三基光学館だけだった(三基はしばらく休業状態だったが、時期を同じくしてジズコでも取り扱うようになっている)。で、その説明を見ると、赤道儀の外観は、以前少しだけ紹介したiOptronのZEQ25GTまんまである。この赤道儀の名前がCEM25Pとかになって、モーターがステッピングモーター化、そしてもう一つCEM25ECとかが出て、なんとコイツがエンコーダー内蔵として発売されているのだ。しかも価格が税込み25万円弱!

赤道儀本体の重量が5kgほどで、センターバランス赤道儀というちょっと変わったバランスの撮り方をしているので、耐荷重が12.3kg!という凄い赤道儀になっている。耐荷重12kgだと、さすがにビグレプ1号は載らないが、それ以外の自分の持っている筒は全部載ってしまう。これは楽しい。

価格の税込み25万円は必ずしも安くないが、例えばピリオディックモーションが比較的小さくてノータッチガイドをやりやすいかもしれないタカハシのEM-11なんかだと、本体だけでこの値段を超えてしまう。しかも電源容量はすごく必要だし、自動導入も無い(後で分かるが、CEM25ECは自動導入しか使えないので、これはこれで微妙だったりする)。CEM25ECだと、消費電力は1A以下で良いので、電源もあまり選ばず結構良い感じだ。しかも三脚、アルミケースまで付属している、こっこっこっこれは、買いたい!買うしか無い!買え!買うのだ−!

…ということで半ば強引に自分で気絶してポチってしまった。これ以上赤道儀増やしてどうするよー、という気もするが、撮影に使う筒がR200SSと、ビグレプ1号、リチャード君ということで3本あるから、赤道儀もパトラー嬢(SXP)とEM姫ことEM200とこのCEM25ECで丁度良いというのはいいかもしんない(いいわけ

発注したのは2016年のは11月下旬。しかし在庫が無かったようで、メーカー、すなわち海外に発注することになる。そんなこんなで実際に物が届いたのは年が明けて2017年の2月。発注してから到着するまで2ヶ月ほどかかってしまった。まぁ、海外もののちょっと変わった天文用品だとこんなのは良くある話?なのでそこまではいいだろう。

普通の赤道儀と違って妙なところも多い
筒を載せるのは南側となる。極軸望遠鏡の暗視野電源ケーブルがコントローラーの右上にプスッと刺さっているヤツ。この辺のケーブルの取り回しや、わかりにくさは、さすがのiOptronである。
 到着した荷物は赤道儀としては小型で、アルミトランクケースにしっかり収まった赤道儀と、ステンレス三脚。このステンレス三脚は個人的には苦手なパターンの三脚の開き止めと赤道儀の固定が一体化しているものだ。部品が増えるし手間も少しかかるのだが、付属で付いてきているのだからあまり贅沢は言わないでおこう。実際強度は全く不満のないものだ。

いそいそと組み立てて、電源はANKERの12Vリチウムイオン電池で電源ON。筒は試しにプロミナーを載せてバランスを合わせてみる。クランプフリーにすると本当にぐるんぐるん回るので、バランスを合わせてない状態で油断すると筒や赤道儀をぶつけて傷めてしまいそうになるので注意が必要だ。その分バランスはシビアに合わせられるのだが、逆を言えばバランスをしっかり合わせておかないと簡単に脱腸してしまうので、これまた注意が必要だ。

クランプの締め方も非常に独特。黒くて丸いつまみを回すと、90度回したところで歯車が噛んだ感じがしてクランプON状態。もう90度回すとまた緩む感じ。なんかこう、ボールバルブを締めてる感じだ。しかもクランプはこれだけではダメで、ONにした後に締め込み用の銀色のネジをぐりぐりと回して締め込んでやらなければならない。この締め込みが実は微妙なのは後で知ることになる。

ゼロポジションはSXP赤道儀などと違って北極星を向く形になる。赤緯体にエンコーダーや電源系は内蔵されてないので、アリガタネジがどちらにあっても問題無く、それがゼロポジションであることをセットしてやればOKだCEM60ECみたいに指定は無いのは考えなくていい。さて、これで自動導入とエンコーダーの超強力TNK赤道儀を手に入れることができたはず。行くぜ!と思ってたのだが、ここで思わぬ事が判明する… …つづく。


2018年3月14日 まさかの問題品。CEM25EC赤道儀


夕方の空の金星を導入したはずなのに地面を向いてしまう
夕方の空の金星を導入したはずなのに、なぜか地面を向いてしまったCEM25EC。このままではとてもじゃないけど使えない。何?何が起きた!?
さて、首を長くして待った甲斐があってなんとか到着したCEM25EC。とにかく一通りの使い方はなんとなく分かった。さっそく使ってみたいがまずは家の中で自動導入のシミュレーションだ。休日の昼間だったが、とりあえず金星は空の上にあるはずなので、これを導入してみた。

モーター音はステッピングモーターで比較的静かにウィイィィィと動いてくれる。消費電力が小さいこともあってSXPとかとは馬力も違うようだ。その分かなり静かで、ロボット的な感じはあまりしない。動き終わったらペポ、と妙な音を出して止まった。が、何かおかしい。この時間帯、金星はもう西の空にあるはずなのに、向いたのは東側の空だ。

?な???

もう頭の上に?が並んでいる状態だ。なにか設定が違っていたに違いない。自分の東経北緯か、時刻か、はたまた…。気を取り直して他の対象を色々導入してみた。室内なので実際には見えないのだが、それっぽい方向を向くはずだ。

しかし、…やはりおかしい。どうしても自動導入が変なのだ。やはり地面を向く場合が多発!。そりゃーどう考えてもおかしいだろ!。

最初は南半球設定とかを疑ったが、少なくとも表示や設定を見ている限り、GPSが検知する赤緯・赤経は問題無し。日本時間も+9Hrで問題無し。後は…ゼロ点での向いている赤緯・赤経がおかしいが、後で分かったこととして、どうやらわざとこうした表示になっているだけで、問題無いらしい。

で、何がおかしいのだろうと思って色々向きを変えていて、赤緯・赤経を指定して動かしているときに原因が分かってきた。赤経だけを動かす限りはそれっぽい動きをするのだ。ところが、赤緯を動かすとなんかあさっての方向に向く。その動き方が反対なのだ!。どうやら、赤緯モーターが逆回転しているようだ。赤経だけがまともに動いているので分かりにくかった。

こりゃあ、どう考えても不良品だろう。モーターだけなら、もしかしたらプラスマイナスの接続だけなのかもしれん。分解してみて…と思ったが、この辺簡単にモーターまでたどり着けそうに無かった。しかもステッピングモーターなんだからプラスマイナスの違いだけで逆回転するほど単純な造りでは無いはずだ。最終的に、自分では対応不可と判断。ショップに連絡を取って、修理対応してもらうことにした。

ただ、普段は電話はそうそうできないし、してもなかなか繋がらない。先方ももちろん当初の私と同じで、何らかの設定がおかしいでしょうと質問してくる。この辺、コントローラーの設定画面を見せたりと苦労したが、やはり故障と判断してくれた。メールでやりとりをするとか、品物を送り返したり、先方の部品到着に時間がかかるとかで、最終的には一ヶ月ぐらい対応に時間がかかった。しかし、なんとかこれでまともに動く赤道儀が到着。発注から三ヶ月ちょい。長い長い買い物だった。

さて、やってきたCEM25EC。せっかくの「究極のTNK赤道儀」バリバリ使ってやらねば損である。んが、実際に使ってみると思っていたよりも簡単ではなかった。究極のTNKはそんなに簡単では無いのだ。後はその辺の使い方のクセを把握してやれば、だんだん使えるようになってくる。次は、その辺の使い勝手をお知らせしたい。


2018年5月16日 使い勝手は工夫が必要CEM25EC赤道儀まる子


ケーブルやコネクタはそれなりに複雑
銀色の丸いつまみがクランプ締め込みネジ。右上の四角いのがGPSセンサー、電源コネクタはL型出ないと赤経体が干渉してしまう。エンコーダーの付いていないノーマル機との違いは、真っ赤なネジ。
さて、2017年の春にやってきたCEM25EC。せっかくノータッチで撮影できる「究極のTNK赤道儀」なのだからバリバリ使ってやらねば損である。いや実際に使ってみると思ってたよりもクセが強いとか使いにくいとかもあるのだが、印象を一通り並べてみよう。

●変なクランプ機構●
以前ちらっと見せてもらったZEQ25や、CEM60ECなんかでも、変わってるなー、とは思ったのだが、やっぱりクランプ機構は奇妙。というか、一般的なクランプは付いていないようだ。ではどうやるかというと、どうやらウォームとホイルを都度付けたり外したりしているような感覚だ。実際にそうかどうかは不明なのだが、クランプは2段階でセットしなければならない。まずクランプネジをかなり緩めて、クランプレバーを縦にする。するとギアが噛み合うような状況になる。通常の摩擦クランプと違って、ギア同士をかみ合わせるので、特定の方向に向けてクランプを締めても、どちらかにずれる場合がある。電源が無ければ、固定台としてもほぼ全く使えないのはこのせいだ。

クランプレバーを縦にした後は、クランプネジを締め込んでいく。このネジを締め切ってしまうと、どうやらギアをかみ合わせすぎる状態になるようで、これまた脱調してしまう。しかし、緩んでるとこれまた脱調しまくりになる。この辺の「ゆるめ加減」がかなり微妙な気配で、慣れるまで分からないのだが、今のところ締め切った後、1/4回転ほど緩めるということでなんとか調整している。運用してみるとどうやらもう少しだけ締めた方が良さそうな気がするが、まだ確認し切れていない。

ショップの人に効いてみると、どうやらこの辺の「締め具合」はウォームとホイルの締め具合を都度(その日の気温などによって)調整していることになるので理にかなっているということ…らしい。ホンマか?という気がするが、この辺離れるしか無い。

●極軸調整●
極軸望遠鏡は内蔵されていて、暗視野照明も(かなり頼りないコネクタの接続が必要だが)付属しているのでセッティングは比較的楽にできる。かがみ込んで覗き込まないといけないのは同じなのだが、暗視野照明は結構便利だ。ただ、北極星の位置はコントローラーに時分が表示されるタイプなので、覗き込んで時分メモリを読んで、そこに北極星をしっかり入れないといけない。水平移動つまみが結構小さかったりして苦労はするが、まぁこんなもんだろう。赤道儀の水平をしっかり出さないと行けないのは注意が必要だ。水準器も付いているが、ちょっと見難い位置にあるので、暗闇では苦労する。

●軽いけどバランスがシビア●
本体は5kgほどでかなり軽い。この軽さはかつてのSP赤道儀に匹敵するが、クランプ機構がかなり特殊なこともあり、あんまり乱雑に扱うのはためらわれてしまう。(25万円を乱雑に扱うなよ、という話はあるが)本当はクランプを締めっぱなしで車に放り込んで使いたいぐらいだが、怖いのでケースに入れてクランプを緩めて持ち運びしていた。なので意外と出し入れに時間がかかっていた。この辺はおいおい考えて、適当な袋に三脚に合体させたまま入れて運べないか検討してみたい。

バランス調整についてはシビアだという話は聞いていたが、本当にシビアだ。クランプを緩めると赤緯も赤経もくるっくる回るのでバランスそのものは合わしやすいのだが、半クランプみたいなことはできないので、微妙なバランス調整をその都度強いられる。バランスをしっかり合わせておかないと、後述する脱調がしょっちゅう起きて更に苦労させられるので、機材をちょっと乗せたり下ろしたりするたびにバランスをしっかり合わせている。面倒なのだがこの辺は仕方無い。

●アライメントと自動導入●
バランスと極軸を取ったらアライメントだが、これは文字だけのコントローラーから行う。海外の赤道儀はだいたいこのパターンだが、とにかく見難い。星を一つ一つ選んでいくのだが、星の名前と明るさだけで選ばなければならないので、名前(綴り)を知ってないと始まらないのだ。しかも反転を含むアライメントだと、どうも導入制度がいまいちな気がする。最も良いのは対象の近くの星でアライメントを取れば良いのだが、その近くの星の名前を知らなければならないし、必ずしもその星がアライメント用データにあるとは限らない(2等星以上ぐらいでないと厳しい…)

5kg以上の荷重をかけるとどうしても「んぎゃー」が起きやすい
耐荷重は12kgだが、実際にはバランスの問題やモーターの能力もあり、5kg前後が適正荷重かなと思う。重量8kgのリチャード君だと、バランスにも寄るが「んぎゃー」が起きやすい
そもそもコントローラーの液晶のレスポンスもあまり良くないので、一つ一つ確認しながら文字を見なければ、何を書いているのかさえ分からない。寒くて暗い星空の下で確認するのはかなりツライ作業だったりする(^^;

更に、ほんのちょっとでもバランスが厳しかったり、クランプの締め具合が悪かったりすると、すぐ脱調で「んぎゃー」と言ってへそを曲げてしまう。全行程を脱調するわけではなく一部分だけ「んぎゃー」が起きて、結果違う方向に向いてしまうということもしばしばなわけで、そのままでは「つかえねぇ」ということになる。本来ならエンコーダーを内蔵しているわけで、筒がどっちを向いているかというのはそのエンコーダーで把握して欲しいところだが、このエンコーダーはあくまで赤道儀の精度を満たすだけの物で、方位を見てはいないようだ。更に赤緯にはエンコーダーは内蔵されてないので、結局「んぎゃー」が起きると役に立たなくなる。最初からやり直しなので結構大変だ。

耐荷重は12kgだが、付属しているバランスウェイトは1つだけ。これだと5kgぐらいまでが限界だ。ただ、シャフト径はビクセンと同じなので、普通にビクセンのバランスウェイトを追加できる。この点は安いウェイトを活用できるので便利だったりする。

アライメントでは矢印キーでずれを補正してやるのだが、ここで数字キーをダイレクトに押してやると、モーター速度を変更することができる。これは結構便利だったりする。早く動かすときは7〜8キー、ざくっと動かすときは4〜5キー、微調整は3キー、といった感じでスピード調整できる。バックラッシュはあるが、ステッピングモーターでレスポンスはいいし、比較的静かなのでうまく動けば気持ちが良い

で、なんとかアライメントも実施し、自動導入で脱調せずに対象が導入できると、撮影はそれほど気にならない。消費電力も少なく、一晩動かしても電池の消耗は知れている。バランスがシビアで本体重量が軽いと言うことは風に弱いと言うことでもあるが、その辺は織り込み済みだ。無茶な撮影さえしなければ、相当に良い歩留まりを上げてくれる。ピリオディックモーションをほとんど感じさせない撮像結果は見ていて気持ちよい。ガイド撮影関係が不要なので、対象を変更するたびにキャリブレーションとかをやり直したり確認したりする時間も不要なのだ。対象の確認さえできればバシバシ撮影できるはずなので、どんどん活用したい…

ただ、±0.5秒というこの高性能なエンコーダーも万能では無いようだ。まだ検証はできていないが、どうもうまく働かないことがある。完全にバランスを合わせるのが良いのか、あるいはバランスが微妙に狂ってウエストヘビーになっているとうまく追尾しきれないことがあるように思える。しっかり撮影していくためにこの辺はもう少し検証していきたい。

忘れてはいけない。新しく来たこの白い小さな赤道儀、ここは例によって新しい名前を付けてやらねばなるまい。特に深い意味は無いのだが、赤道儀には女性名を付けることが慣例になっているので、そのつもりで。CEM25ECの特徴といえば、やっぱりエンコーダー。普通に変換すると円こーだーということで円子、訓読みして「まる子」ということにした。おお、かわゆいではないか。ちっちゃいけど精度の高いまる子。活躍してくれることを祈っている。



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